2016 Fiscal Year Annual Research Report
磁気粘性加熱による超新星爆発の探究―r-process元素合成の解明
Project/Area Number |
15J07551
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福田 遼平 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 超新星爆発 / r-process |
Outline of Annual Research Achievements |
金やウランといった鉄より重い元素を合成する過程の一つにr-processがある。r-processとは、中性子捕獲を何度も繰り返した後、ベータ崩壊を何度も起こすという一連の仮定のことである。r-processが宇宙のどこで起こっているのかは未だ解明されておらず、観測やシミュレーションによって候補天体を探している状況である。 r-processは超新星爆発に伴って起きるとされてきたが、一般相対論やニュートリノ輸送を含んだシミュレーションにより、質量数が130以下のr-process元素しか作れないことが分かっている。また、中性子性合体も候補天体として盛んに研究されているが、銀河の化学組成の進化と合わせて議論すると、特に銀河初期にr-process元素の存在比を説明できないとする説がある。 本研究では、超新星爆発の一種であるcollapsarというメカニズムに着目し、r-processが起きるかを確かめようとするものである。昨年までにZEUS2Dコードによるcollapsarの流体シミュレーションを行い、4000核種のネットワーク計算によってr-processが起きることは確認できたが、その結果は上記の一般的な超新星爆発とさほど変わらない結果となり、さらなる研究の余地があることが分かった。 これに対し、私は高解像度を実現できるFLASHコードによるcollapsarのシミュレーションを計画している。FLASHには自己重力、核物質の状態方程式、回転、粘性、近似的ニュートリノ輸送等、様々な物理を取り入れ、collapsarのシミュレーションと元素合成の計算を行う。現在までに自己重力と状態方程式を加えることに成功しているが、今後さらに他の物理を随時追加していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の予定では本年度までに、自己重力と状態方程式に加え、回転と粘性、さらには近似的ニュートリノ輸送を含んだ計算ができるようになっていた。これらは以前使用していたZEUS2Dコードで取り扱うことができていたプロセスで、FLASHコードにも必ず取り入れなければならない。しかしながら、FLASHコードにおける重力崩壊のテストシミュレーションが成功せず、原因を特定している段階である。自己重力と核物質の状態方程式はcollapsarのみならず、超新星爆発の計算において最も重要な物理過程であるため、現在行っている検証のプロセスは今後より具体的なシミュレーションを行っていく上での土台となる。したがって、現段階で少しでも正確に計算できることが必須である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては、2段階に分けて研究を進める。第一段階は現状うまくいっていない重力崩壊のテスト計算の原因究明である。自己重力や核物質の状態方程式のような物理的な過程に加え、並列化や流体方程式の解法の問題、さらには数値的なエラーの可能性も一つ一つ検証していく必要があると思われる。 第二段階としては、回転と粘性、近似的ニュートリノ輸送の考慮である。回転はcollapsarメカニズムの中心的な物理過程であるが、FLASHコードでは2次元軸対称シミュレーションを扱うことができないので、先行研究の角運動量保存則を新たに課す手法で回転を考慮できるようにする予定である。また、粘性については、これまでZEUSコードで取り入れていたので、そのノウハウを生かしてアルファ粘性と呼ばれるものを導入する。これは、磁気によってはたらく粘性を経験的なパラメータを使って表したもので、ブラックホール降着円盤の計算等でよく用いられているものである。これにより、降着円盤からのアウトフローを再現することができるようになる。最後にニュートリノであるが、これはLeakage法によって近似的に取り入れる。特に本研究は元素合成をターゲットとしているので、ニュートリノの効果によって電子の組成が変化することを正しく考慮できるようになる。すべての効果を取り入れ、高解像度のシミュレーションを行う。
|