2016 Fiscal Year Annual Research Report
クロゴキブリとその寄生性線虫からみる寄生・共生関係の進化と外来種問題
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15J09961
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
小澤 壮太 中部大学, 応用生物学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | クロゴキブリ / ワモンゴキブリ / 寄生性線虫 / 遺伝子多型解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゴキブリに寄生するThelastomatidae科線虫種を調査するために、計14種のゴキブリを解剖した結果、ほとんどがそのゴキブリ種に対応して特定の線虫種が寄生していた。このことから、ゴキブリ宿主と寄生性線虫種の間で、種の組み合わせがほぼ決まっていることがわかった。一方、前年度に引き続き、クロゴキブリより分離した寄生性線虫を様々なゴキブリ宿主に人工感染させる実験をさらに進めることができ、その結果、この寄生性線虫種は確認した5種のゴキブリ全てに感染することがわかり、宿主特異性が低くゴキブリ宿主範囲が非常に広いことがわかった。 日本の主に九州・沖縄に定着するワモンゴキブリには、2種類の寄生性線虫が同時に寄生していることを明らかにし、国際誌Acta Parasitologicaに掲載された(Ozawa et al., 2016; Sriwati et al. 2016)。一方、各国で捕獲されたワモンゴキブリには、今回我々が明らかにした2種類とは別の線虫種が寄生していたとする報告もあった。そこで宿主であるワモンゴキブリの遺伝子多型および寄生性線虫種をもとに、ワモンゴキブリの原産地や拡散の歴史についての推定を目指し、インドネシア、フィジーにおいてワモンゴキブリのサンプリングをおこなった。前々年度末にフィジーにて、また、前年度の夏にインドネシアにて、(1)外来種ゴキブリの侵入・定着実態、(2)その寄生性線虫について調査データを得ることができた。フィジーに定着するワモンゴキブリの寄生性線虫種は日本で寄生していた2種と同種の線虫に加え、新たに未記載の線虫2種を確認することができた。次にワモンゴキブリのmtDNAの部分領域を用いて、遺伝子多型の比較を行なったところ、フィジーのほうがこれまでvon Beerenら2016が報告していたアメリカよりも多様性が高いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゴキブリに寄生するThelastomatidae科線虫種を調査するために、計14種のゴキブリを解剖し、ゴキブリ宿主と寄生性線虫種の間で、種の組み合わせがほぼ決まっていることを明らかにし、ゴキブリと寄生性線虫の関係性について理解する上で基礎的な知見を得ることができた。またクロゴキブリの寄生性線虫を様々なゴキブリ宿主に人工感染させる実験を進めることができ、これら人工感染実験の結果を加え、クロゴキブリの寄生性線虫は5種のゴキブリ全てに感染することができ、クロゴキブリの寄生性線虫はゴキブリ宿主範囲が非常に広く、宿主特異性が低いことを明らかにできた。人工感染実験をあと少し繰り返すことでデータを充実させ、平成29年度上旬に論文投稿を予定している。 日本の主に九州・沖縄に定着するワモンゴキブリに、2種類の寄生性線虫が同時に寄生していることを明らかにし、国際誌Acta Parasitologicaに掲載された(Ozawa et al., 2016; Sriwati et al. 2016)。一方、各国で捕獲されたワモンゴキブリには、今回我々が明らかにした2種類とは別の線虫種が寄生していたとする報告があった。そこで宿主であるワモンゴキブリの遺伝子多型および寄生性線虫種をもとに、ワモンゴキブリの原産地や拡散の歴史についての推定を目指し、フィジー、インドネシアにて(1)外来種ゴキブリの侵入・定着実態、(2)その寄生性線虫の調査データを得ることができた。現在これまで解析したフィジーのサンプルデータと比較するためにインドネシアのワモンゴキブリサンプルからmtDNAの部分領域を解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、クロゴキブリより分離した寄生性線虫を様々なゴキブリ宿主に人工感染させる実験を完成させるために、人工感染実験を繰り返してデータを充実させているところである。本線虫種は5種3属2亜目にまたがって広く宿主範囲を及ぶことが示せることとなり、この結果は平成29年度上旬に論文投稿を予定している。前年度から取り組んでいる外来種ゴキブリの寄生性線虫による在来種ゴキブリへの汚染実態調査を完成させるために、平成29年度は国内での調査を予定しており、九州・沖縄、本州中部、東北で粘着トラップを仕掛けてクロゴキブリおよびヤマトゴキブリを捕獲し、定着状況やその寄生性線虫を調べる予定である。 宿主であるワモンゴキブリの遺伝子多型および寄生性線虫種をもとに、ワモンゴキブリの原産地や拡散の歴史についての推定を目指して、インドネシアスマトラ島北端に位置するバンダアチェ市における(1)外来種ゴキブリの侵入・定着実態、(2)その寄生性線虫の調査データから現在解析を実施中である。計149頭のゴキブリを捕獲でき、市街地で捕獲したゴキブリはほとんどがワモンゴキブリであり、ワモンゴキブリが主要衛生害虫として定着していることが分かった。これまで調査したフィジーのサンプルデータと比較するために捕獲できたワモンゴキブリのmtDNAの部分領域を現在解析中であり、今後どの線虫種がどれくらいワモンゴキブリに感染しているか調査し、宿主と寄生性線虫との関係性について考察していく予定である。さらに、日本に定着するワモンゴキブリの調査結果を加え、東南アジア、南太平洋島嶼、東アジアの3地域における分布比較を行なっていく予定である。
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Research Products
(10 results)