2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞運動およびアクチン動態制御におけるPCTK3シグナル伝達機構の解明
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15J09973
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
松田 真弥 徳島大学, 先端技術科学教育部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞運動 / 情報伝達 / CDK / FAK1 |
Outline of Annual Research Achievements |
PCTAIRE kinase 3 (PCTK3)はcyclin dependent kinase (CDK)ファミリーに属するSer/Thrキナーゼであり、他のCDKとは異なり、組織選択的な発現パターンを示すことから、細胞周期制御以外の生理機能を発揮することが推測されている。これまでに、siRNAを用いたノックダウン解析により、PCTK3がアクチン脱重合因子であるcofilinのリン酸化状態を調節し、細胞形態や細胞運動の制御に関わることを見出した。そこで、本研究は、PCTK3による細胞運動制御機構解明を目的とし、その下流シグナル伝達機構の解明を試みた。 まず初めに、cofilinのリン酸化調節に関与するRhoA, Rac1シグナル伝達経路について調べた。その結果、PCTK3ノックダウンによってRhoA活性が増加するのに対して、Rac1活性は減少し、PCTK3はRhoA/Rac1の活性バランス制御に関与していることが示唆された。さらに、PCTK3ノックダウンがRhoA/Rac1の上流因子に及ぼす影響を調べた。その結果、Focal adhesion kinase 1 (FAK1) Y397及びSrc Y416のリン酸化が亢進することを見出した。このことから、PCTK3が接着斑(Focal adhesion)の形成や、接着斑を介したシグナル伝達の調節に関与する可能性が考えられた。そこで、接着斑を構成する分子(vincullin, talin1, tensin2, paxillin, FAK1, α-actinin)との相互作用を調べた結果、PCTK3はFAK1、α-actininと結合することが明らかとなった。さらに、in vitro kinase assayにより、PCTK3がFAK1をリン酸化することがわかり、FAK1がPCTK3の基質であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PCTK3がFAK1を介して細胞運動制御に関わることを明らかにしたことから、本年度の目標はおおむね達成できたと考えられる。PCTK3の基質は同定されておらず、その下流シグナル伝達機構は不明であったが、基質候補としてFAK1を同定したことから、PCTK3シグナル伝達機構解明への重要な手掛かりを得ることができた。今後、FAK1がPCTK3の真の基質であるか検証を重ねていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
PCTK3によるFAK1のリン酸化部位を同定するとともに、抗リン酸化抗体を用いて、内在性レベルにおいてFAK1がPCTK3によってリン酸化されるか検証する。また、FAK1擬似リン酸化変異体を作製し、PCTK3によるリン酸化がFAK1の活性や細胞内局在、安定性などにどのような影響を与えるか調べる予定である。加えて、Crispr/Cas9システムを用いてPCTK3ノックアウト細胞株を構築して、細胞形態や運動能力の変化を解析していく。また、PCTK3はFAK1の活性を負に制御することが予想されるため、がん細胞の浸潤・転移能力を抑える働きを有する可能性が考えられる。そこで、各種癌細胞、組織を用いて、PCTK3の発現解析や浸潤アッセイなどにより、PCTK3とがん転移の関連性を調べたいと考えている。
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Research Products
(2 results)