2015 Fiscal Year Annual Research Report
河川水位・氾濫面積のデータ同化手法の開発及びマルチスケール洪水警報システムの構築
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15J10456
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳩野 美佐子 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 洪水 / 河川氾濫 / 大気陸面相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は洪水警報システムの構築である。今年度は洪水研究に用いられる気候モデルの改良を重点的に進めた。当初予定していた最新気候モデルNICAM[Satoh et al., 2014]と河川氾濫モデルの結合を行うのではなく、より汎用的にするためにファイルの読み書きを通じてデータ通信が行われていたMIROC[Watanabe et al., 2010]とCaMa-Flood[Yamazaki et al., 2011]の結合をJcup[Arakawa et al., 2011]と呼ばれるカプラーを導入した結合方法へと改良した。NICAMは既にJcupが導入されているため、結合は比較的容易となることが想定される。Jcupを通じた結合を行うことにより、それぞれのモデルに特化した結合方法だけでなく、より一般化された結合を行うことが可能となる。 以前の結合方法では、MIROCの海洋結合されていない大気大循環モデルAGCM及びCaMa-Floodにより出力される流出量、氾濫面積割合をそれぞれファイルの読み書きを行うことでデータ通信を行っていた。Jcupによって共有したメモリを介してデータ通信が可能となり、ファイルの読み書きによる余分な時間が削減でき、計算時間は半分以下に短縮された。この時間短縮により、さまざまな実験設定での複数ランなどがより容易となり、気候モデルとしての有用性もあがったと考えられる。 河川氾濫導入によって河川流量の再現性は改善される地点が多いことがわかった。また、河川モデルの出力だけに限らず、大気モデルの気温の再現性向上も地域によってはみられた。夏季(6~8月)の高緯度域及び中央アジアでAGCMは高温バイアスがあるとされているが、これについてもバイアスが緩和されることがわかった。動的に変化する河川氾濫過程を導入している気候モデルはこれまで存在せず、気候モデルにおける河川氾濫過程導入の必要性を示唆する結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった最新気候モデルへの導入とは異なっているが、より汎用性のある結合方法を導入し、かつ、気候モデルにおける河川氾濫過程の重要性を示唆することができた。洪水予測の精度向上に貢献すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目では洪水警報システムに用いられる河川氾濫モデルの改良を考えている。陸面過程と河川は現在独立して計算されているため、より包括的な陸域水循環を表現できるモデル開発に取り組む。
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Research Products
(5 results)