2015 Fiscal Year Annual Research Report
精密有機合成を指向したプロピレンの選択的オリゴマー化反応の開発
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15J10619
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 祐介 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 立体選択的オリゴマー化 / 後周期遷移金属 / プロピレン重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに,リン上にメンチル基を有するパラジウム/ホスフィン-スルホナート錯体を用いることによりプロピレンの重合が進行し,後周期遷移金属触媒を用いても分子量が1万を超えるポリプロピレンが得られることを見出した.本年度は,リン上に種々の置換基を有するホスフィン-スルホナート触媒を用いたプロピレンの単独重合について検討を行い,リン上の置換基が重合に及ぼす効果について検討を行った.その結果,リン上がアリール基の場合,置換基をかさ高くしても,分子量がほとんど向上しないのに対し,リン上がアルキルの時は,リン上をかさ高くすることで,大幅に分子量が向上することがわかった.このことから,リン上がかさ高いアルキル基であることが,分子量の向上に必須である.続いてプロピレンの挿入の選択性に着目し,DFT計算によりプロピレン挿入における位置選択性について検討を行った.その結果リン上がメンチル基の時,プロピレンの1,2-挿入が高い選択性で進行することがわかった.このことは,挿入選択性の制御が分子量の向上に密接に関連することを示している. さらに,プロピレンの重合に高い位置,および立体選択性を示す前周期遷移金属触媒を用いたプロピレンのオリゴマー化について検討を行った.これまでに,大学院生の村山君と共同でCoordinative chain transfer Polymerizationという手法を用いることにより,プロピレンの立体選択的なオリゴマー化反応が進行することを見出している.本年度は,この手法を用いて実際の天然物の合成に応用した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,すでに立体選択的なプロピレンの重合が進行することが知られている前周期遷移金属触媒を用いて,天然物合成への応用を試みた.Coordinative chain transfer Polymerizationという手法を用いることにより,プロピレンの立体選択的なオリゴマー化反応が進行したことを基に,本年度は実際にオリゴマーの単離,精製を行った後,官能基変換を行うことで実際に天然物の合成に応用した.立体選択的なオリゴマー化の際の,オリゴマーの長さの選択性に関しては低いものの,プロピレンのオリゴマー化を天然物合成へ応用した例はなく,研究課題を遂行する上で,大きな一歩を踏み出すことができた. また,当初の目的である後周期遷移金属を立体選択的なオリゴマー化にむけて,後周期遷移金属触媒を用いたプロピレンの重合についても検討を進めることができた.本年度は,リン上の置換基が重合度に及ぼす影響について評価することができ,かさ高いアルキル基がプロピレンの重合を進める上で重要であることが見出している.これは,今後,高立体選択的なプロピレンの重合を進める上で,重要な知見となるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,Coordinative chain transfer Polymerization (CCTP)という手法を用いると,立体選択的にプロピレンを重合する触媒を用いることで,立体選択的なプロピレンのオリゴマー化が進行することがわかった.しかし,オリゴマーの長さの選択性に関しては低いため,収率の向上に向けて,他の前周期重合触媒の検討を行うことを予定している. さらに,後周期遷移金属触媒によるプロピレンの重合で高い立体選択性が達成できれば,CCT)によるオリゴマー化と組み合わせることで,官能基を有する開始基からのプロピレンのオリゴマー化が期待でき,反応の用途が広がることが期待できる.そこで,今年度得られた後周期遷移金属によるプロピレンの重合結果を基に高立体選択的にプロピレンの重合を進行させる触媒の探索を行う予定である.具体的には,リン上にかさ高いアルキル基を有するホスフィン-スルホナート触媒について検討を行う.
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Research Products
(6 results)