2015 Fiscal Year Annual Research Report
多核金属中心のナノ炭素材料への導入による高効率かつ高耐久な電極触媒の創成
Project/Area Number |
15J10629
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
越川 裕幸 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 酸素還元反応 / 多核金属中心 / 無機材料 / メタン分解反応 / 生体内酵素 / 酸素分子活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果として、以下の2つが挙げられる。 まずは、2核銅中心を有する銅錯体の炭素材料への導入による高効率かつ高耐久な酸素還元触媒の創成(特別研究員申請時からの継続課題)を行った。種々の燃料電池普及のため、普遍元素を用いた高活性・高耐久な酸素還元触媒の開発が望まれている。本研究では、生体内酵素の有する多核金属中心において少ない過電圧で酸素還元反応が進行することに着目し、そのような構造を安定な無機材料中に導入することで活性と耐久性との両立を狙った。既報の2核銅錯体と炭素材料との混合物に短時間熱処理を施し得られた触媒では、錯体の有する高い酸素還元活性が損われずに、触媒耐久性が大きく向上した。この触媒活性の結果およびX線構造解析の結果より、錯体の有する活性中心構造が短時間焼成の過程で炭素材料中に導入されていることが示唆された。本成果は本年度、査読付英文学術雑誌に掲載された。 次に、上記の触媒設計指針を、汚染物質処理・地球温暖化対策の観点から重要であるメタン分解反応へと適用した。環境調和型メタン分解プロセスの構築のためには、普遍元素の使用に加え、大気中に豊富に存在する酸素分子を酸化剤に用いる必要がある。生体内酵素や人工材料においては、窒素配位により電子状態制御された鉄中心において、酸素分子の活性化および基質分解に必要な活性酸素種生成が高効率に進行している。本研究では、このような鉄‐窒素配位構造を耐熱性・耐酸化性を有する無機材料である炭化ケイ素上に導入することで、メタン分解触媒の創成を試みた。鉄と窒素を導入した材料では、鉄のみを導入したものと比べ、メタン分解速度が向上した。またメタンが完全消費されるまで(30時間以上)顕著な触媒能低下は見られなかった。上記の触媒活性評価およびX線などによる構造解析の結果より、窒素が配位することで鉄中心におけるメタン分解能が向上したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特別研究員申請時に継続課題であった酸素還元触媒創成の仕事について、一つの成果としてまとまり、査読付英文学術雑誌へ掲載された。また同様の触媒設計指針をもとにメタン分解触媒の創成にも成功した。この点は、得られた知見を工業的に重要な他反応へと適用するという当初の目的から考えても、評価に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
配位子種の選択による金属中心の電子状態制御、さらには配位結合強度の適正化という観点から材料設計を行い、エネルギー・環境問題解決のために重要な他反応系へとさらに展開していく予定である。
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