2015 Fiscal Year Annual Research Report
不登校・高校中退者の学校再経由の進路選択に関する研究-サポート校生徒に着目して-
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15J10651
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内田 康弘 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 「前籍校の履歴現象効果」の導出 / サポート校生徒の学校再経由の進路選択過程 / 不登校・高校中退経験者の自己再定義過程 / サポート校における地域的共通性・差異性の導出 / 「重要な移動」としての高校中退経験 / 「重要な他者」としてのサポート校スタッフの存在 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、不登校・高校中退経験者の学校再経由による進路選択の構造に関して、私立通信制高校サポート校に焦点を当て、その実態の解明を目的とするものである。そのため本年度は研究計画に基づき、以下の研究課題3点に対する分析を行った。 第一に、2012年度から継続して分析していた、高校中退経験を持つサポート校生徒の卒業後の進路規定要因に関して大学進学行動に焦点を当てた論稿が、日本教育社会学会の学会誌において採録決定となった。分析の結果、「前籍校の履歴現象効果」という独自の効果が抽出され、それが生徒たちの卒業後の進路規定要因として大きな影響を及ぼす可能性を指摘した。また同時に、サポート校スタッフが生徒の進路選択に大きな影響を与えうる「重要な他者」として機能し得ることを知見として提出した。 第二に、全国展開する大規模サポート校X学院を事例に、X学院V校(Vは地名)における継続的なフィールドワーク(教育活動への参加観察・インタビュー調査)を行い、生徒のサポート校入学要因及び登校継続要因に関して分析を行った。その際、高校中退経験を持つ生徒特有の、「前籍校」からの移動経験という実態に着目し、「重要な移動」という分析視角から、彼/彼女たちのサポート校入学要因及び登校継続要因に対する主観的解釈の導出を試みた。その結果、高校中退経験を持つサポート校生徒たちは、サポート校で日常生活を過ごす中で、自身の高校中退経験(転編入経験)に対する当初の否定的な解釈を超え、肯定的な「重要な移動」経験としてそれを捉え直していくという自己再定義実践が存在することを知見として提出した。 第三に、V校以外の中部・近畿地方におけるX学院約10校舎へのフィールドワーク(参与観察・インタビュー調査)を実施し、生徒たちのサポート校入学要因、登校継続要因、卒業後の進路規定要因における地域的な共通性・差異性をそれぞれ導出・分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定した通り、サポート校X学院V校における継続的なフィールドワークを行い、その成果を2015年6月の日本子ども社会学会、9月の日本教育社会学会、10月の日本通信教育学会においてそれぞれテーマ別に発表した。研究発表のなかには、年度当初に策定した研究計画には盛り込めなかった内容について分析が進んだものもあり、その分析に対する反響も大きかった。 研究論文に関しては、査読付きの全国誌への掲載も複数決定し、また、高校教育に関する商業誌から特集論文の寄稿を依頼されるなど、社会的な貢献も大きいと考える。さらに、10月以降は調査の範囲を広げ、V校以外のX学院全国校舎でのフィールドワークも行っており、地域比較という観点からも成果を挙げつつある。 またX学院以外のサポート校及び不登校・高校中退経験者の支援団体との信頼関係の形成も順調に進んでおり、研究のフィールドが広がりつつある。 こうした現状を踏まえて、現在までは当初の計画以上に順調に研究を発展させることができていると総合的に判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の質的調査の分析を進めて知見を整理し、サポート校の地域的な共通性・差異性をテーマにした研究発表を行う。また、X学院V校でのフィールドワークも継続して調査を進め、各年度における比較分析を行う。そして、これまでの調査で得られた知見を全て投入した質問紙を作成し、V校及び協力が得られそうなX学院グループ他校舎において量的調査を実施する。その調査を通じて、『不登校・高校中退経験を持つサポート校生徒の入学から卒業に至るまでの移行プロセスの解明・一般化』という研究課題を遂行する。なお、調査結果は学会での研究発表及び学会誌への論文投稿を予定している。
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Research Products
(6 results)