2015 Fiscal Year Annual Research Report
シクロパラフェニレンの自在官能基化を駆使したチューブ構造の構築と応用
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15J10802
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
桑原 拓也 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 有機化学 / シクロパラフェニレン / カーボンナノリング / ソルバトクロミズム / ドナーアクセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロパラフェニレン(CPP)は、カーボンナノチューブの最短フラグメントとして古くから注目されてきたが、その合成は2008年に達成されたばかりであり、近年、漸くサイズ選択的合成が可能となった。しかし、CPPの官能基化に関してはほとんど研究が進んでいないため、本研究では、CPPの自在官能基化法を確立し、さらにCPPの新たな応用研究を行うことを目的とした。 本年度は、まずCPPの自在官能基化法の確立を目指し、CPPと各種クロム錯体との反応を検討した。CPPに様々な配位不飽和クロム錯体を作用させた後、プロトン引き抜き、官能基の導入を試みたが、複数の官能基が導入されたCPPを得るには至らなかった。 しかしながら、申請書作成時には予期していなかった、全く新しいCPPの応用研究を展開することができた。湾曲パラフェニレンのHOMOが高い準位にあるので、CPPにアクセプターを組み込むことで、全く新しい環状ドナーアクセプター分子の創製が可能となるのではないかと考えた。そこで、アントラキノン含有カーボンナノリングを合成し、さらにそのアントラキノン部位をより強力なアクセプターである、テトラシアノアントラキノジメタンへと誘導した。 これらのカーボンナノリングは、溶解させる溶媒の極性に依存して、その蛍光色を緑から赤色へと変化させた。このようなソルバトフルオロクロミズム特性をもつカーボンナノリングは初めての例である。理論計算を行ったところ、HOMOは湾曲パラフェニレン部位に、LUMOはアクセプター部位にそれぞれ局在化していることから、これらの分子はドナーアクセプター型カーボンナノリングといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である、CPPの自在官能基化法の確立に至っていないが、初めてのドナーアクセプター型カーボンナノリングを合成し、そのソルバトフルオロクロミズム特性を明らかにした。 それらの成果に関して、国内及び国際学会においてポスター発表を行い、さらに国際誌に論文を発表するに至った。 以上より、研究は当初の予定とは若干異なるものの、CPPの新たな応用研究を展開できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もCPPの官能基化法の開発を最優先課題として研究を行う。当初の戦略であった、クロム錯体を利用するCPPの自在官能基化法の確立は困難であることから、別の方法でCPPの官能基化法を開発していく。 さらに、官能基の種類に応じて様々な応用研究(例えばチューブ構造の構築など)を展開させる。
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Research Products
(4 results)