2015 Fiscal Year Annual Research Report
ピントリッキオと周辺画家による聖母子像の制作と転用についての研究
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15J10899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永井 裕子 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ピントリッキオ / 聖母子像 / ルネサンス / イタリア / 美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、ローマを中心としてヨーロッパ各地で調査・研究を行うとともに、国内外の学会で発表を行った。 2015年4月1日から10月31日までは、ローマ大学ラ・サピエンツァに研究指導委託し、研究活動を行った。その期間には、主にヘルツィアーナ図書館(Bibliotheca Hertziana, Max-Planck-Institut fur Kunstgeschichte)、ヴァチカン図書館(Biblioteca Apostolica Vaticana)やローマ大学のリオネッロ・ヴェントゥーリ資料室(Archivio Lionello Venturi)などの各研究機関において、文献資料および写真資料を収集・精査した。2015年5月と8月には、フィレンツェのマックス・プランク美術史研究所(Kunsthistorisces Institut in Florenz)にて、必要な文献および写真資料の調査を行った。 2015年11月1日から12月25日までは、ローマ・ミラノ・パリ・ベルリンにて調査を行った。ミラノでは、ポルディ・ペッツォーリ美術館(Museo Poldi Pezzoli)において、ピントリッキオ作の円形画《聖母子と洗礼者ヨハネ》の実見調査を行ったほか、アンブロシアーナ美術館(Pinacoteca Ambrosiana)やブレラ美術館(Pinacoteca di Brera)で関連作品の調査を行った。パリでは、ルーブル美術館にて《聖母子と聖グレゴリウス、聖アンデレ》、ルーブル美術館素描室で円形画の素描《聖母子と洗礼者ヨハネ、聖アンデレ、聖ヒエロニムス》、ジャックマール=アンドレ美術館(Musee Jaquemart-Andre)において、関係する画家や図像の作品を精査した。ベルリンでは、ボーデ美術館(Bode-Museum)とベルリン絵画館(Staatliche Museen zu Berlin, Gemaldegalerie)にて、イタリアの同時期の小型聖母子像の調査を行った。特にベルリン絵画館では、収蔵庫および資料室での調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で説明した調査・研究成果の一環として、特にヒューストンのサラ・ブラッファー・キャンベル財団の所蔵するピントリッキオ作の《授乳の聖母》とそれから派生する4作品について、図像の典拠とそのヴァリエーションに焦点を当てた研究を進めた。この研究の成果は、以下の国内外の学会で発表を行った。2015年5月には、ドイツのバイエルン州のアイヒシュタット大学(Katholische Universitat Eichstatt-Ingolstadt)にて開催された国際学会「“Sehen” 13. Internationale Fruhjahrsakademie, Eichstatt」に参加し、イタリア語および英語で発表を行った。この学会では北米および欧州の諸大学の教授や研究者と、イタリア・ルネサンスの分野に捉われない幅広い視点からの有益な意見交換を行うことができた。2015年6月には、東洋大学(白山キャンパス)で催された「第7回西洋中世学会」に参加し、ポスター発表を行った。この学会では、中世美術の図像から派生したと考えられる上述の作品について、専門家である中世美術分野の研究者などから助言をもらうことができた。 また、ミラノのポルディ・ペッツォーリ美術館で調査した聖母子像を含めた、ピントリッキオが制作した円形画(トンド)形式の祈念画の研究も行った。これに関連して、シエナ絵画館(Pinacoteca Nazionale di Siena)が所蔵する円形画の《聖家族》の実見調査を行うほか、デーヴィス美術館(ウェルズリー大学、U.S.A.)の学芸員から円形画《聖母子と聖ヒエロニムス、聖アンデレ》に関する資料を得るなどの調査を進めた。この円形画研究の成果は、2016年5月に筑波大学で開催される「第69 回美術史学会全国大会」で発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
文献調査、 個別作品調査を前年度から引き続き行っていくのに加え、海外の美術館などの作品の所蔵先で調査を行うほか、学会での発表や論文執筆を行う。 まず、2015年度に発表を行ったヒューストンのサラ・ブラッファー・キャンベル財団の所蔵する《授乳の聖母》とその周辺作品の図像に関する研究内容、および2016年5月に発表予定である円形画作品に関する研究を、論考としてまとめ、投稿する予定である。 夏季と冬季には、ローマのヘルツィアーナ図書館やフィレンツェのマックス・プランク美術史研究所を中心とした文献・写真資料の調査を行う。また、フィラデルフィア美術館(Philadelphia Museum of Art)、ノースカロライナ美術館(Raleigh, North Carolina Museum of Art)、ホノルル美術館(Honolulu Museum of Art )などをはじめとしたアメリカの各地に所蔵される、ピントリッキオに帰属される聖母子像の実見調査および資料収集を行いたい。
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Research Products
(3 results)