2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J11531
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 慈生 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | トポス量子論 / 共通原因原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
古典確率分布の相関を特徴づける共通原因原理の量子論への一般化は、これまで量子論理に基づいて定式化されていた。古典確率分布を一般化して量子状態を表示するトポス量子論を用いれば、より直接的な共通原因原理の一般化が得られると予想される。本研究はトポス量子論の共通原因原理が量子情報処理に与える限界を明らかにすることで、これまで基礎研究の段階にあったトポス量子論の応用可能性を探ることを目的とする。 平成27年度には、付値モナドのクライスリ射を用いることによりトポス量子論における共通原因原理を定式化し、どのような量子状態が共通原因を持つか解析した。共通原因原理を定式化するには古典条件付き確率を一般化する必要がある。条件付き確率は分布モナドのクライスリ射で表されるため、古典確率論における共通原因原理を分布モナドによって再定式化し、分布モナドを付値モナドに交換することによって、トポス量子論における共通原因原理を定式化した。 定式化した共通原因原理と量子多体相関との関係を調べるため、多体量子状態が持つモノガミーについて解析を行った。報告者はトポス量子論における多体状態を定義し、それが量子状態よりも広いクラスのpositive over pure tensorと呼ばれる状態と対応し、量子状態と同様モノガミーの性質を持つことを示した。モノガミーについての圏論的な解析から、報告者の定式化した共通原因原理を用いると、非局所的量子相関に限らず少しでも相関を持つ多体状態は共通原因を持たないと見なされてしまうことを示した。 この結果は付値モナドとモノガミーの相性の悪さを示唆しており、トポス量子論の発展に対する一つの問題点を明らかにした。モノガミーとの不親和を回避しながら共通原因原理を定式化するには、付値モナドの代わりにフォック空間モナドを用いるなどの解決策が考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通りトポス量子論における共通原因原理を定式化し、さらに非局所的量子相関と共通原因原理の関係も明らかにした。しかし得られた結果から量子モノガミーと付値モナドの相性の悪さが明らかになったため、翌年度に局所場の量子論における共通原因原理の解析を始める前に、付値モナド以外を用いて共通原因原理を再定式化する必要が生じ、やや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、続けて局所場の量子論における共通原因原理の解析に着手する予定であった。しかしその前に、量子モノガミーとの不親和性を回避するため、また場の量子論への適用可能性を高めるために、同種粒子系を記述するフォック空間モナドを用いることで共通原因原理の再定式化を行う。
|
Research Products
(2 results)