2016 Fiscal Year Annual Research Report
小児患児が経験するイルネス・アンサーテンティの生涯発達的影響と発生機序を探る
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15J12105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 悠 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | イルネス・アンサーテンティ / 小児慢性疾患 / 面接調査 / 生涯発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の調査より、医療者、特に、担当医以外のコメディカルとの関連が母親や子どものイルネス・アンサーテンティ(IU)と密接に関連している可能性も示唆された。そのため、子どものIUの発生機序を詳細に把握するためには、子どもと家族とのIUの相互作用だけでなく、医療者との相互作用も含めて総合的に検討していく必要があると判断した。医療者の相互作用を知るためには、その前段階として、まず医療者がどのような実態を持って、携わっているかを知ることが必要である。そのため、本年度は、医療者の一種として、入院する子どもの生活のケアや心理的な支えとして病棟に勤務する病棟保育士に着目して研究を行った。 病棟保育士への面接調査を通して、病棟保育士が子どもの不安(IU)にどのように対応しているか、そして、病棟保育士が普段どのような保育目標をもって、どのように、入院している子どもと関わっているのか、他職種とどのように協働しているのかなどを中心に明らかにすることを目的としていた。調査は、病院の一般小児病棟もしくは小児専門病院の病棟に勤務し、保育士自らが業務内容を決め、看護助手やクラークとしてではなく病児保育士としての働きを求められている病棟保育士16名を対象に行った。病棟保育士が子どもの不安(IU)にどのように対応しているかについて、その結果としては、対象となる子どもの年齢によって、また、母親の不安の程度によって、対応が異なることが示唆された。特に子どもが乳児や幼児期前期の比較的小さい子どもである場合には、まずは「安心できる存在」としてスキンシップをとったり遊んだりする中で不安の解消を試みるのに対し、子どもが幼児期後期から児童期であった場合には、子どもの「不安の聞き役」に徹し、あくまで「医療のことは全然わからない存在」として、共感的に傾聴する傾向があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた母親に対する面接調査を行うためのフィールドの確保にも成功し(本年4月以降面接開始予定)、また、昨年度知見からさらに研究を発展させ、新たに病棟保育士を対象とした研究を実施することができたため、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在得られているフィールドにおいて母親への面接調査を継続して実施することによって、現在闘病中の子どもをもつ母親のIUに関する知見を蓄積する。また、今後はこれまでに得られている知見の発表・論文化を行う。
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