2016 Fiscal Year Research-status Report
沖縄産海洋生物由来の骨代謝調節分子の探索と作用機序の解明
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15K01803
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
照屋 俊明 琉球大学, 教育学部, 准教授 (90375428)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海洋シアノバクテリア / アルカリ性ホスファターゼ / リポペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄県浦添市付近の海岸、沖縄県本部町付近の海岸で採集した海洋シアノバクテリアの抽出物が骨芽細胞の初期分化マーカー酵素であるアルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性を上昇させることが明らかとなった。浦添市付近の海岸で採集した海洋シアノバクテリアの抽出物について、骨芽細胞のALP活性を指標にして骨芽細胞分化促進物質を分離、精製したところ、新規マクロライド配糖体を単離し、各種スペクトル解析と誘導反応により化学構造式を明らかにした。次に得られた化合物が石灰化を促進するか検討した。石灰化の判定には、カルシウム塩を染色するアリザリンレッドS溶液を用いた。その結果、骨芽細胞の分化促進実験とは異なり、得られた化合物にはアリザリンレッドS染色の増加が認められなかった。沖縄県本部町付近の海岸で採集した海洋シアノバクテリアについても同様の方法で骨芽細胞分化促進物質を分離、精製したところ、ALP活性を上昇させる化合物として、既に報告されているリポペプチドを単離した。次に得られ化合物が石灰化を促進するか検討したところ、骨芽細胞の分化促進実験と同様に、リポペプチドを処理した群ではアリザリンレッドS染色の増加が認められた。またこのシアノバクテリアからは、メチル基の立体化学が異なる類縁体も得られているが、この類縁体にはALP活性の上昇や、石灰化促進作用は認められなかった。その他にも紅藻からALP活性を上昇させる化合物としてpalisadin A とluzonensol を単離したが、どちらの化合物も石灰化促進作用は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨芽細胞を標的とした化合物の探索においては、海洋シアノバクテリアからALP活性を上昇させるマクロライド配糖体とリポペプチドを得ている。その後の研究からマクロライド配糖体は石灰化を促進しないことが明らかになったが、リポペプチドは低濃度で石灰化促進効果が認められた。また紅藻からALP活性を上昇させる化合物としてpalisadin A とluzonensol を単離した。以上のことから、本課題はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
沖縄県浦添市付近の海岸で採集した海洋シアノバクテリアからはALP活性を上昇させる新規マクロライド配糖体を単離しているが、3種類の類縁体も同時に単離している。得られた化合物については、その化学構造式を明らかにし、詳細な薬理活性を評価する事で、構造活性相関に関する知見を得る。リポペプチドについては、石灰化を促進する事が明らかになっているので、骨芽細胞の後期分化に影響するかを検討するため、骨芽細胞分化の後期に発現される骨基質タンパク質の一つであるオステオカルシンの発現量を測定する。また、海洋生物に含まれる骨代謝調節物質の探索については、これまでと同様に探索研究を進める。
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Causes of Carryover |
海洋シアノバクテリアに含まれる骨代謝調節物質の単離が順調に進んだため、消耗品購入のための予算に余剰金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度さらに海洋シアノバクテリアを採集し、骨代謝調節物質を探索する予定なので、その消耗品の購入に充てる。
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