2015 Fiscal Year Research-status Report
保育所保育士による保育ソーシャルワークの可能性と養成教育のあり方に関する研究
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15K03994
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
直島 正樹 相愛大学, 人間発達学部, 准教授 (00465874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 好市 神戸常盤大学, 教育学部, 教授 (00342171)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 保育ソーシャルワーク / 保育所保育士 / 保育士養成課程 / 保育ソーシャルワークの担い手 / ソーシャルワーク教育 / 実践的展開への課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,保育ソーシャルワークに関わる理論・知識・技術基盤,実務基盤(担い手)等,研究の基盤となる部分や,その他,保育現場での実践的展開に向けた課題について,これまで申請者らが行ってきた研究成果を基に,新たに文献研究等も行いながら再検討した。 理論・知識・技術基盤をどこに置くかは,①保育に置く,②社会福祉(ソーシャルワーク)に置く,③独立したものとするという形に分けて考え,それぞれの実現に向けての課題を整理した。実務基盤(担い手)については,保育士,社会福祉士(ソーシャルワーカー),社会福祉士資格をもった保育士(児童家庭福祉を専門とする社会福祉士)等,論者によって見解が異なるところである。法律・制度においても明確になっておらず,『保育所保育指針解説書』から,保育士が幅広くソーシャルワーカーとしての役割を担う必要性が読み取れるが,実践における具体的な機能・役割等は明記されていない。そして,社会福祉士が保育ソーシャルワークを中心的に担うとした場合も、その養成教育のあり方等に検討の余地のあることが明確になった。。 また,保育士養成課程におけるソーシャルワーク教育に関わる部分も,保育現場での実践的展開に向けた課題の一つであり,論文・文献を基に整理した。その結果,現在の保育士養成課程において,保育ソーシャルワークに関わる教育不足や教授内容のばらつきが見られること,保育士がソーシャルワークに対して感じる戸惑いは,学生の保育士に対する職業イメージの大半部分がケアワークで占められている上,養成課程における内容的・時間的限界があり,入学から現場に出るまでほとんどそのイメージが変わらないこと等が明らかになった。 以上のように,今後予定している保育現場への調査等につながるよう,さらには保育ソーシャルワークに関わる教育カリキュラムと教育方法の開発に向けた基礎的研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近年,保育ソーシャルワークに関する議論が活発化し,保育現場における必要性・活用方法が注目されている。ただし,保育ソーシャルワークに関わる理論・知識・技術基盤,実務基盤(担い手)等についてはさまざまな議論があり,定まったものがない。また,保育士養成課程において,「相談援助」等のソーシャルワーク系科目はあるものの,その教育方法等に関しても課題があり,保育現場での実践的展開に向けては,まだまだ検討の余地が多いといえる。このあたりについて,文献研究,学会での発表・講演会等から得た知見の分析に時間を要している。早急に,保育現場の職員へのインタビュー調査を行う等の方法で研究を進めていきたい。 また,海外の保育専門職の業務範囲等の視察も行いたいと考えているが,どこの国に行くことが本研究をより有効に進めることができるのか,さまざまな角度から再検討し,時間を要した。検討の結果,スウェーデンを予定しているが,具体的な視察の内容,費用面等において業者との連絡・調整等が必要となっており,こちらも早急に確定させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までの研究を踏まえながら,保育ソーシャルワークの理論的研究は継続していく。今後,「保育ソーシャルワーク」を構築していくとするならば,それは、「本来のソーシャルワーク」を意図しているのか,単に「保護者支援」を換言したものなのか,さらなる理論的・専門性等の検討・整理が必要と感じている。 また,保育現場における調査実施を考えているが,インタビュー調査のみか,もしくは質問紙調査も必要か等,再検討した上で実行したい。そして,養成校教員と保育所保育士との共同研究,さらには海外(スウェーデンを予定)の保育専門職の業務範囲等の視察・分析を行う予定である。 その上で,保育ソーシャルワークに関わる理論と専門性,実務基盤(担い手),養成教育・リカレント教育(現場の保育所保育士が興味・関心,必要性を示した内容や先行研究から得られた知見に基づく内容等を取り入れた形で立案)等について検討し,一つのあり方を提起したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究をより有効に進めるため,次年度は日本における保育現場への調査に加え,海外の保育施設の視察・専門職へのインタビュー等を行いたいと考えている。それに向けた準備を進める(視察の国を検討する,複数の旅行会社等とやり取りを行う)中で,旅費,施設への視察費等が想定以上に必要になることが判明した。 来年度に予定している学会等にかかる参加費用や物品購入計画と照らし合わせた際、次年度請求分だけでは,特に海外(スウェーデン)の保育視察に関わる費用が不足する可能性が高い。そのため,次年度使用額としての活用が有効であると考えたことが主な要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記「理由」にも示した通り,次年度は,保育現場への調査およびスウェーデンの保育施設の視察・専門職へのインタビュー等を予定している。今回生じた「次年度使用額」は,「次年度請求額」と合わせ,調査等においても必要となるノートパソコンの購入費,調査・視察部分の旅費や施設への謝礼金に充てる等、有効に活用したいと考えている。
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Research Products
(4 results)