2005 Fiscal Year Annual Research Report
植物の自然免疫におけるNB-LRR遺伝子ファミリーの機能解明
Project/Area Number |
16380031
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 英樹 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20197164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷 修 東北大学, 大学院・農学研究科, 助手 (10261497)
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Keywords | 抵抗性遺伝子 / 過敏感反応 / シグナル伝達 / キュウリモザイクウイルス |
Research Abstract |
シロイヌナズナのエコタイプC24はキュウリモザイクウイルス黄斑系統[CMV(Y)]に対して過敏感反応による抵抗性を示す。シロイヌナズナのゲノム上に存在する約200コピーのNBS-LRR遺伝子について各遺伝子に特異的な約500bpの領域を搭載したカスタムアレイを作製し、CMV(Y)感染C24におけるNBS-LRRクラスメンバーの発現変動を網羅的に解析したところ、CMV(Y)抵抗性に伴い5種類の遺伝子の発現が増加することを見出している。これらの中で5遺伝子(Atlg72890,Atlg72900,Atlg72910,Atlg72930,Atlg72940)は、TIR-NBSドメインを含むタンパク質をコードしており、第1染色体の長腕末端付近にクラスターをなして存在していたことから、CMV-inducible-R-like gene cluster 1(CIR1)と名付けた。本年度は、CMV(Y)抵抗性におけるCIR1発現上昇の役割を明らかにするため、CIR1過剰発現形質転換体の作出と、CIR1発現上昇におけるサリチル酸シグナル伝達系の関与について解析を行った。 (1)CIR1過剰発現体の作出: CMV(Y)抵抗性におけるCIR1の機能解析のひとつとして、CIR1メンバーであるAtlg72930をgreen fluorescent protein遺伝子(GFP)と融合させた遺伝子を、35Sプロモーター制御下で過剰発現させた形質転換体の作出を試みた。形質転換体が得られる効率は極めて低く、最終的にGFPによる緑色蛍光を指標に形質転換体2ラインを得たが、いずれも著しい矮化症状を示した。誘導抵抗性が恒常的に発現しているシロイヌナズナ変異体では、程度の差はあるものの矮化形態を呈することが既に報告されていることから、Atlg72930::GFP過剰発現体でもそれらと同様に抵抗性が誘導されている可能性が考えられた。本過剰発現体における防御関連遺伝子の発現やCMV抵抗性の増強などについては、さらに平成18年度に解析を行う予定である。 (2)CIR1の発現とサリチル酸シグナル伝達系: C24におけるRCY1を介したCMV(Y)抵抗性では、SAシグナル伝達系が重要な役割を果たしていることが、本申請者のこれまでの研究から明らかになっている。そこで、CMV(Y)抵抗性におけるCIR1の発現とSAシグナル伝達系について解析を試みた。C24に外部からSA処理してもCIR1の発現は上昇しなかったことから、シグナル伝達カスケードにおいて、CIR1はSAより上流に位置している可能性が考えられた。次に、SAシグナル伝達系に異常をきたした突然変異体pad4とC24を交配し、その後代からCMV(Y)抵抗性遺伝子RCY1とpad4をそれぞれホモに持つ個体(RCY1 pad4)を数ライン選抜した。RCY1 pad4にCMV(Y)を接種し、CIR1メンバーの中でAtlg72900、Atlg72910、Atlg72930の発現を調べたところ、それらの発現は野生型(RCY1 PAD4)と同様に上昇していた。以上の結果より、CIR1の発現は、CMV(Y)抵抗性のSAシグナル伝達系においてpad4よりも上流に位置してRCY1により制御されているか、あるいはSAシグナル伝達系とは独立したシグナル伝達系を介してRCY1による制御を受けていると推察された。
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Research Products
(3 results)