2007 Fiscal Year Annual Research Report
フランス・ルネサンス文学に見る「暴力」-「暴力の福音化」から「福音の暴力化」へ
Project/Area Number |
16520168
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
平野 隆文 Aoyama Gakuin University, 文学部, 教授 (00286220)
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Keywords | 仏文学 / 西洋史 / 宗教学 / ルネサンス / 暴力 |
Research Abstract |
本年度は最終年度に当たるため、今までに収集した資料の読解と分析および執筆の準備に充てた。2008年末(遅くとも2009年3月末)頃に上梓することが内定している『暴力・その儀式的なるもの-もう一つのルネサンス論』(仮題、講談社、選書メチエのシリーズ)の完成に向けて、今までに扱った作家や資料の内、ルネサンス期前半ではラブレーの戦争描写に於けるプロパガンダ性に注目して論考を進めた。また、16世紀後半のいわゆる「パンフレ文学」の中では、カトリック側としてヴェルステガンの『残酷劇場』を入念に分析し、プロテスタント側の「腹部切開」という儀礼的暴力が、当時の聖体拝領を巡る論争を反映している点を指摘し、授業や公開講座などで紹介すると同時に、「フランス・ルネサンス期の文学に見る王権の表象」という論文の中で紹介した。さらに、プロテスタント側の代表としてアグリッパ・ドービニエの『悲愴歌』を細かく読み込み、カトリーヌ・ド・メディシスがフィレンツェ出身の魔女として表象されていること、さらには、王国が悪魔と魔女の勢力による暴力によって、内部から瓦解する危機に晒されていると感知されていること、教皇が反キリストとして把握されていることなどを明らかにできた。以上の点も、上記の論文で指摘している。 さらに、 クレスパンの『殉教録』の翻訳と分析にも取りかかり、プロテスタントの自称「殉教」のリスト化が、キリストの血の犠牲を永遠に引き延ばす危険を孕んでいる点、および聖体拝領を巡る新旧両陣営のパンフレを分析することにより、聖体拝領の儀式(の繰り返し)が、一種の「神食らい(テオファジー)」でありキリストの犠牲の一回性・唯一性を『無化』する試みであると把握されていた点も明らかにできた。さらに、テヴェやレリーの旅行記とモンテーニュのテクストを比べながら、カンニバルの食人行為を如何に西欧的な視線で把握しているかも明らかにできた。
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Research Products
(1 results)