2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520352
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
金 慶珠 東海大学, 外国語教育センター, 助教授 (60349420)
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Keywords | 視点 / <注視点> / <視座> / 日本人韓国語学習者 / 韓国人日本語学習者 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に行った(1)実験調査の実施による資料収集、(2)視点分析における理論的枠組みの構築に基づいて、その内容を分析・整理し、具体的な成果物としてまとめ上げた。その詳細および活動内容は、以下の通りである。 学習者の言語運用における視点の問題については、久野(1978)によって提示された談話法規則に基づく実証分析が行われてきた。しかしながら、従来の先行研究における視点分析の観点は、談話構成における「主語の設定」と「視点の設定」を同一視し、「発話の統語的形式上の相違」を直に「話者の視点の相違」と見なすことによって、日本語話者と他言語話者の間に見出される「主語の一貫性」における相違をも、話者の「談話構成における視点の一貫性」における相違として解釈している。 こうした状況において本研究では、従来の先行研究に対する理論的考察を通じて「発話における統語的形式」と「話者の視点の設定法」との間には直接的な対応関係が認められないことを指摘しながら、日本語および韓国語に共通する「視点の表現構造」を具体化させると共に、その表現構造の選択のあり方を比較対照の基準とすることの妥当性について検討を行った。具体的には、発話における話者の視点には、話者が目撃する場面の中から「どの関与者を中心に発話を構成するのか」を意味する<注視点>と、話者の場面をとらえる主観的立場としての<視座>という二つの構成要素が想定されることを指摘した。 次に、以上の理論的枠組みに基づいて、日本語話者(JJ)および韓国語話者(KK)の談話資料に対する分析を行った結果、JJおよびKKには、従来において指摘されてきた「主語の一貫性における相違」が認められたものの、こうした表層構造上の相違は、話者の注目対象としての<注視点>相違に過ぎず、話者の主観的立場を意味する<視座>の設定頻度およびその設定対象においては、JJおよびKKの間に差は認められないとの結果を得た。更に、第二言語習得の観点から、学習者の母語と目標言語間の異なる視点の表現法が、その中間言語に転移として影響するのかについて検証するため、韓国人日本語学習者(KJ)および日本人韓国語学習者(JK)の談話資料に対する二方向からの対照分析を行った。その結果、KJとその母語である韓国語話者(KK)との間には<注視点>の設定における母語からの「視点の転移」は認められなかったものの、<視座>においては、上位の被験者群である「中上級学習者」において、KJ・JK共にそれぞれの母語話者と類似した表現構造を呈することから、学習者の熟達度が上がるに連れ、<視座>の設定頻度が高まると同時に、その表現法においても母語に類似する傾向が認められるとの結論を得た。
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Research Products
(1 results)