Research Abstract |
平成16年8月25日〜9月12日にかけて,北京および内モンゴル自治区フルンボイル市において,文書資料収集と聞き取り調査を行った。北京では,主として中国第一歴史档案館において,研究課題に関連する清代文書資料,特に黒龍江地区(現在のフルンボイル市を含む)の八旗組織に関する上奏文を閲覧し,一部を複写した。フルンボイル市では,フルンボイル学院遊牧文化研究所の協力の下に,同市ハイラル区,エヴェンキ族自治旗,陳バルガ旗において,エヴェンキ族・ダウール族・モンゴル族(バルガおよびウールド集団)の郷土史家・地方政府関係者等約20人にインタヴューし,各民族集団の歴史全般,とりわけ移住のプロセス,生活文化の変遷,氏族構成,言語使用状況,オボー祭祀等について情報を得た。それらに分析を加え,かつ北京で収集した文書資料の内容と照合した結果,特にエヴェンキ族およびモンゴル族のウールド集団に関して,現在の居住地,氏族構成,民族集団としてのアイデンティティ等の背景に,清代の八旗制による統治の影響が明らかに認められるとの結論を得るに至った。これは,本研究を開始するに際して立てた見通しと,基本的に合致するものである。もちろん,上記の分析にあたっては,日本国内および中国で購入した関連図書をも大いに参考にした。さらに,エヴェンキ族自治旗にある「エヴェンキ博物館」の展示からも,多くの示唆を得た。ただし,当初予定していた日本国内における関連資料(満州国時代の調査報告等)の調査・収集については,本年度はほとんど実施に至らなかったことを遺憾とする。
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