Research Abstract |
本年度は,閉領域内の圧縮性流体の回転流の数値解析による研究を行った.回転円盤付近の回転流は,古くから典型的な流れとして精力的に研究が行われている.回転円盤上の流れに関しては厳密解が得られていて,精密な解析が可能である.また,閉領域内で円盤が回転する流れは,実用的に大変重要で,半導体のシリコンウェハの洗浄装置として多くの企業で研究が進められている.従って,閉領域内で円盤が回転することによって実現される回転流は理論的にも応用的にも大変重要な流れで,今回は閉領域の上入口と下出口の間に圧力差をつけ,それによって駆動される流れを数値的に求めた.得られた重要な結果は以下の様である. 1.閉領域の下面に吸引孔を数箇所つけた場合,円盤が回転しないときは,吸引孔の位置によって流れが変化し,極めて非軸対称な流れが生成される.一方,円盤が回転すると,流れは軸対称に近づき,回転が流れを平滑化することがわかった. 2.円盤が回転する場合,遠心力,コリオリ力によって渦構造が大きく変化し,それによって流体粒子の挙動が変化することが明らかとなった.特に,円盤裏面の流体粒子の運動は盤面近傍の渦により排除される傾向があることがわかった. 3.回転中心軸がずれる偏芯回転を行った場合,渦構造に顕著な変化が現れ,偏芯率がわずか1/60程度であっても流れ,特に渦構造に大きな変化が生じることが示された. 以上の結果に基づき,閉領域内においては流れが全体として回転する場合とそうでない場合では極めて本質的な相違が生じることが明らかとなり,その相違は渦構造に顕著に現れることが示された.従って,圧縮性回転流においても渦構造のトポロジーを詳細に解析することによって,流れの本質的な構造を理解することが可能であることが示された.現在は偏芯率を固定して計算しているため,偏芯率の流れに対する微妙な影響は十分に調べられていないが,今後,偏芯率の変化に対する流れ構造の変化を包括的に研究する予定である.また,数値計算の精度については,偏芯がない場合では問題ないが,偏芯率がゼロでない場合にはやや精度が不足していて,現在改良を検討中である.
|