2006 Fiscal Year Annual Research Report
薬物依存の形成・維持・再発の脳内神経学的機序と新規治療の開発に関する研究
Project/Area Number |
16591166
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
宮田 久嗣 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教授 (70239416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 聖名子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (30277032)
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Keywords | ニコチン / 条件刺激 / 脳内報酬系 / 脳内自己刺激実験 / 外側視床下部 / ラット |
Research Abstract |
[目的]薬物依存では、薬物の報酬効果に条件づけられた環境刺激が、依存の形成、維持、再発に重要な役割を果たしているとされる。しかし、薬物の効果に条件づけられた環境刺激の脳内報酬系に対する作用を検討した研究はほとんど行われていない。したがって、三年度にあたる本研究では、日常嗜好品であるタバコに含まれるニコチン(NCT)の強化効果と連合した環境刺激の脳内報酬系機能におよぼす影響を、ラットを用いた脳内自己刺激(ICSS)実験を用いて検討した。 [方法]オペラント実験事態で、外側視床下部のICSS行動を形成させたラットに、NCT 0.4mg/kgの皮下投与と環境刺激(条件刺激:凹凸のある床と黒色の壁)の条件づけを行った。テストでは、条件刺激とNCT、条件刺激と生理食塩水(SAL)、NCTと連合していない新規刺激(平坦な床と白色の壁)とNCT、新規刺激とSALの4条件提示下でのICSS閾値への影響を検討した。 [結果]ロジスティック回帰分析を行い、上記4条件におけるICSS閾値を算出して統計学的検定を行った。この結果、新規刺激とSALを提示した場合と比較して、条件刺激とNCT、条件刺激とSAL、新規刺激とNCTを提示した場合には、そのいずれにおいてもICSS閾値は同程度に低下した。すなわち、NCTと連合した条件刺激は、NCT単独投与時と同程度にICSS閾値を低下させた。しかし、NCT投与時における条件刺激と新規刺激の提示条件の間にICSS閾値の低下に差はなかったことから、NCTと連合した条件刺激の効果と、NCTの効果は加算的には働かないことが示された。 [結論]本実験結果は、NCTと連合した環境刺激が示す報酬効果が、NCTとは独立して脳内報酬系を刺激することを示した初めての報告となる。そして、このような現象が、喫煙行動の維持や禁煙の困難さに重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Research Products
(4 results)