Research Abstract |
我々は,慢性心房細動の外科治療に際し,多くの複雑な切開線を持つメイズ手術に変わり,単純な左房のみを切開する術式を考案し以前に報告した.さらに,より低侵襲な術式である肺静脈口隔離術を考案したが,最小の侵襲で施行可能な慢性心房細動の手術術式の完成のためには,簡易な電気生理学的検査に基づいたアブレーション部位の決定が最も望まれる.一連の術式の臨床的効果の確認や安全性の調査のため,本年度は,まず,従来より行ってきた術式の遠隔期臨床成績と,術前の患者背景および術中電気生理学的所見を併せて検討し,責任心房筋の局在性と術式の妥当性を検証した.術後には,これも可能な限りカテーテルのよる電気生理学的検査を行い,また,退院後には経時的追跡調査を行い,心房細動消失の有無を初め,心電図所見の推移や心機能の推移を調査した. また,術中電気生理学的検査としては,以前に開発したマッピングシステムを用い,今後の解析に備えられるように電位データを蓄積した.これと合わせて,手術中に簡易に行える術式決定のための電気生理学的検査法の開発と鑑別法の策定のため,新しい簡易型マッピングプローベの開発と電位の非線形処理やスペクトル解析を応用した電位解析システムの開発を平行して行った.汎用性が高く確実で簡易なマッピングを実現するために,新規に開発したプローベは心房の解剖学的固定部位である大静脈基部(上下大静脈,左右肺静脈入口部)に脱着可能なものを開発した.本年度は,臨床症例への応用には至らなかったが,システム構築の準備は完成しており,次年度より解析結果が蓄積することにより臨床的に意義のある心房部位を特定することが可能と考えられ,簡易で効率的なマッピングが期待される.また,同時にマッピング解析結果と術前検査データの突き合わせを行うことにより,心房マッピングを行わなくても心房電位パターンが推定できる鑑別法を開発・確立してゆく.
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