2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16606002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大塚 俊之 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (20324709)
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Keywords | 発生・分化 / 脳・神経 / 神経科学 / 再生医学 |
Research Abstract |
転写因子Hesのプロモーターを用いて神経幹細胞の可視化と選別を試みた。Hes1およびHes5プロモーター下に半減期の短い不安定なGFP(d2EGFP)を発現するベクターを用いてトランスジェニックマウス(pHes1-d2EGFP,pHes5-d2EGFP)を作成した。 GFPは胎生早期において神経管の脳室周囲帯に限局した発現パターンを示し、ニューロンには発現しておらず、radial gliaを含む増殖能を持った未分化な細胞に発現していた。胎生11日目の脳からFACSで分離したGFP陽性細胞群と陰性細胞群におけるneurosphere形成能を比較したところ、GFP陽性群からのみ高率にneurosphereが形成された。分散培養したGFP陽性細胞のTime-lapse観察においては、片方の娘細胞がニューロンに分化し、もう片方がGFP陽性にとどまる非対称分裂を認め、一部のGFP陽性細胞は更に2-3回GFP陽性細胞を産み出す自己複製を示した。また、Numb陽性の娘細胞はGFPの発現が弱く、逆にGFP陽性の娘細胞はNumb陰性であり、Numbの分配の少ない娘細胞ではNotch-Hesシグナルが維持されて幹細胞としてとどまるというストーリーによく合致する結果が得られた。以上の結果から、pHes-d2EGFPの発現が神経幹細胞を可視化するマーカーとなり得ること、FACSにより幹細胞を選別し回収できる可能性が示された。 また、今回のトランスジェニックマウスにおいては、成体脳でもニューロン産生の続いている領域(海馬歯状回、脳室下帯)にGFP陽性細胞が多く認められたほか、損傷時等にニューロンを産生するポテンシャルを持った網膜の幹細胞領域(毛様体縁部)やミューラーグリア、内耳の支持細胞等に特異的にGFPが発現しており、こうした内在性幹細胞の動態の解析や賦活化及び分化誘導メカニズムの解析のためのツールになり得ると考えられた。
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