2004 Fiscal Year Annual Research Report
蝸牛求心性聴覚情報伝達機構における一酸化窒素(NO)の作用及び細胞内Ca^<2+>動態への影響
Project/Area Number |
16791028
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
永田 基樹 関西医科大学, 医学部, 助手 (10340712)
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Keywords | inner hair cell / nitric oxide / neuronal nitric oxide synthase / auditory neurotransmission / Ca^<2+> influx / cochlea / ATP |
Research Abstract |
蝸牛求心性聴覚情報伝達機構に対するNOの作用を明らかにするため、本研究は求心性聴覚情報伝達において重要な役割を演じている内有毛細胞(IHCs)において内耳の重要な神経伝達物質と考えられているATP、さらに細胞内Ca^<2+>動態及びNOとの関係を検討した。実験はモルモット蝸牛単離IHCsを用い、NO指示剤であるDAF-2、Ca^<2+>指示剤であるFura-2AMを細胞に負荷により、光学的にIHCs内Ca^<2+>、NOの測定を行った(一部の細胞はNOとCa^<2+>の同時測定を行った)。 細胞外ATP刺激によって、IHCsにおいて経時的なDAF-2の蛍光強度の増加即ちNOの産生が見られた。このNO産生は非特異NOSの阻害剤であるL-NAME、P2レセプターのantagonistであるsuraminによって抑制された。Ca^<2+>-freeの場合、或はcalmodulinの阻害剤であるcalmidazolium存在の場合はATP刺激によるNOの産生が認められなかった。同時測定の実験で、ATP刺激によるIHCsにおけるNO産生が細胞内Ca^<2+>濃度の上昇に引き続いて起こった。そしてATPによるNOの産生は、P2レセプターの活性化によりCa^<2+>の流入が起こり、結果細胞内Ca^<2+>濃度上昇、NO産生が惹起されたと考えられた。Fura-2を用いた実験で、ATP刺激によるIHCs内Ca^<2+>濃度の上昇はL-NAMEによって増強されたが、NOのドナーであるSNAPによって抑制された。マンガンのquenchingの実験では、ATP刺激によるマンガンの細胞外から細胞内への流入は、L-NAMEによって抑制されたが、SNAP投与によって著しく増加された。即ち蝸牛IHCsにおけるNOは、ATP刺激によるCa^<2+>の細胞内への流入を抑制すると考えられる。更にATPによるCa^<2+>反応は8-Br-cGMPに抑制されたが、NOの標的な酵素sGCの阻害剤であるODQ及びPKGの阻害剤であるKT5823によって増強された。以上の事から、NOがcGMP/PKG経路を介して、negative feedback作用でATPによるCa^<2+>反応を抑制すると考えられた。選択的nNOSの阻害剤である7-NI及び非特異的NOS阻害剤であるL-NAMEは同程度にATP刺激によるNO産生を抑制し、同じ程度にATPによるCa^<2+>反応を増加した。又、免疫組織学的にnNOSとP2X2はIHCsの頂部に共存したことにより、ATP刺激によるNO産生は主にnNOSから由来すると考えられた。
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