2017 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological Study on Kinship in Tibetan Society in North India
Project/Area Number |
16H06880
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中屋敷 千尋 京都大学, 人文科学研究所, 研究員 (00784498)
|
Project Period (FY) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
Keywords | 親族 / 関わり合い / 相互行為 / サブスタンス / 共住 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、従来のチベット系社会における親族研究で注目されてきた系譜関係とは異なり、日常生活を営むなかで築かれる互助的な親族ニリンがどのような関係かを解明することだった。研究により得られた結果と成果は、以下の通りである。 第一に、ニリンが、婚姻を規定する父系出自集団とは異なり、日常を支えてきた親族範疇であることと、それが重視されるようになった背景を明らかにした。ニリンは、キンドレッドとみなされうるが、それが個人的な親密さによって規定され、時に他人をもその範疇に含める点に大きな特徴がある。ニリンの関係は、物や労働力の交換、家の訪問、共食などを通じて構築され、日常生活を送るための重要な基礎となっていることを解明した。 第二に、以上のニリンは儀礼や農作業などの文脈によって異なる形であらわれることを示した。第三に、比較的新しく導入された選挙制度の影響を受け、ニリンの枠は伸縮することを解明した。具体的には、選挙活動において、ニリンが集票組織として活用され、その過程で枠がめまぐるしく変化し、時に対立する双方の立候補者から圧力をかけられ、投票行動が決定できない状況に陥る現象が生じていることを明らかにした。第四に、ニリンには、時に親しい隣人や友人も含められることを解明した。そのため、親族と非親族の間に明確な区別はなく、親族は、その都度暫定的に想定されるものであることを明らかにした。 以上の検討を通じて、ニリン関係の理解には、従来の親族研究で注目されてきた道義や戦術の視点のみからは理解できず、日々のサブスタンスの交換や共住によって親族が築かれるとするrelatednessの視点が参考になることを明らかにした。しかし同時に、時にサブスタンスの交換が存在しないような場面でもニリンの関係が築かれていた。この点に関しては、サブスタンス論を超えるものとして、今後検討していく必要がある。
|
Research Progress Status |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Research Products
(4 results)