2017 Fiscal Year Research-status Report
マインドフルネスに基づくソーシャルワーク専門職エンパワメント・プログラムの開発
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16K04226
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
池埜 聡 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (10319816)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マインドフルネス / ソーシャルワーク / 援助関係 / 社会福祉士 / 精神保健福祉士 / エンパワメント / ストレス低減 |
Outline of Annual Research Achievements |
マインドフルネスに基づくソーシャルワーク(SW)専門職のストレス低減と援助関係の涵養に資するエンパワメント・プログラム構築にあたり、平成29年度の成果を以下報告する。 1. 平成28年度実施のSW専門職対象のマインドフルネス・プログラム評価を目的とした査読付論文「マインドフルネスがもたらすソーシャルワーク援助関係への影響:社会福祉従事者の主観的変容を踏まえた探索的研究」『人間福祉学研究』10(1), 91-116 を出版。研究結果は、日本ソーシャルワーク学会第34回大会(平成29年7月)、日本社会福祉学会第65回秋季大会(平成29年10月)、日本マインドフルネス学会研修会(平成30年2月)にて報告した。 2. 平成28、29年度にかけて実施してきた包括的文献研究、研究会、そして上記SW専門職対象のマインドフル実践評価を通じて、SW専門職対象のマインドフルネス実践方法をまとめた著書『福祉職・介護職のためのマインドフルネス』(単著:中央法規出版)、また、マインドフルネスの視点を盛り込み、SW援助関係を事例検討から読み解いた著書『ケアマネジメントにおける援助関係の軌跡:クライアントとの間にあるもの』(共著:関西学院大学出版会)を刊行した。 3. UCLA Mindful Awareness Research Center(MARC)との協働を継続的に実施し、平成30年度よりVisiting Project Scientist in Psychiatry としての立場を取得。MARCとの連携体制の土台が構築された。 4. マインドフルネスストレス低減法(MBSR)(公式認定プログラム:8週間:平成29年10月から12月)およびマインドフルネス認知療法(MBCT)(日本マインドフルネス学会主催:Module 2:平成29年7月)を修了。SW専門職に対するマインドフルネス方法論の応用を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、包括的文献研究、SW専門職へのマインドフルネス・プログラム評価、UCLA MARCとの協働、そしてMBSR・MBCTの経験などを通じて著書2冊、関係論文3本を出版することができた。これら成果は、研究計画後半に設定されていたSW領域への「マインドフルネスの普及」に寄与する。現在、社会福祉・ソーシャルワーク領域におけるマインドフルネス研究と実践は萌芽期にあり、SW専門職がマインドフルネスに触れることのできる機会は限られている。マインドフルネスの価値、効果機序、方法、禁忌事項など基本的理解を得ることで、より多くのSW専門職から今後の研究への協力を得やすくなると判断し、平成29年度は、これまでの探索的研究の具体的な成果発信を優先させた。 一方、研究計画において未達成のものは以下の2点となる: 1. SW専門職に対するオンライン調査の基盤形成について、Qualtricsを用いた方法論の策定にとどまり、モデルおよび質問紙の構築は今後の課題として残った。マインドフルネス特性とSW専門職のウエルビーイング要因との関係を横断的調査から把握する計画は、当初の予定からスケジュールがやや遅れ気味となっている。一方、平成29年度までの探索的研究成果から横断調査におけるモデル形成と質問紙作成のガイドが得られたため、実現に向けて基盤形成は得られた。 2. ホームページのインターアクティブな形式の構築は未完となっている。 これら未完部分は、平成30年度においてフォローしていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、以下の項目に焦点を当て、研究を推進していく。 1. 情報交流などインターアクティブな機能を備えたホームページを公開していく。SW専門職にとってマインドフルネスを学び、理解するための情報発信拠点になるべく、ホームページの改訂を加えていく。 2. Qualtricによるオンライン調査の横断調査デザイン、質問項目、サンプリングの確定を行う。すでに兵庫県社会福祉士会からは協力の内諾が示唆されており、兵庫県精神保健福祉士会、日本医療社会福祉協会などとの協力体制を具体化する。 3. UCLA MARCにおける客員研究員としての立場を踏まえ、MARCとの協働を多面的に実現させていく。具体的には、1)MARC主催の通年プログラム“Training Mindfulness Facilitation (TMF)”への参加によるSW専門職のためのマインドフルネス実践方法の拡大と指導者養成方法の開発、2)TMF参加者(マインドフルネス研究・実践者)とのネットワークを通じたSW、精神保健、教育、司法などアメリカにおけるマインドフルネス実践の現状と課題の抽出、3)MARC主体の調査プロジェクトとの協働、4)MARCおよび全米の各機関が取り組むマインドフルネスのリスク要因の明確化と対応方法の探索、などに焦点を当て、取り組んでいく。 4. 成果発表として、1)アメリカにおけるアップデートされたSW専門職など対人援助職に向けたマインドフルネス・プログラム及びその効果をまとめた論文作成、2)研究会の蓄積から生まれる日本型マインドフルネスの新たな方向性を取り上げた著書の出版計画立案、3)マインドフルネスのリスク及びネガティブな影響に焦点を当てた研究の包括的レビュー論文作成、4)TMFをベースにして、世界に波及するマインドフルネス指導者養成の現状とSW専門職支援への応用を扱った論文作成、などを達成する。
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Causes of Carryover |
当初予定していたオンライン調査の基盤形成やホームページ構築作業が完了していないこと等から次年度使用額が生じた。UCLA Mindful Awareness Research Center (MARC) との協働に関する交渉過程から、平成30年度にMARCのVisiting Project Scientist in Psychiatryとして役割を担うことになり、アメリカにおける協働体制構築のための旅費その他経費に充てることとする。
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Research Products
(11 results)