2020 Fiscal Year Research-status Report
マインドフルネスに基づくソーシャルワーク専門職エンパワメント・プログラムの開発
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16K04226
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
池埜 聡 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (10319816)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マインドフルネス / ソーシャルワーク / ソーシャルワーカー / エンパワメント / 援助関係 / 社会正義 / 価値 / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、令和元年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって中断されていた九州マインドフルネス医療ソーシャルワーク研究会(KM-MSW)の参加者である複数のソーシャルワーカーからオンライン・インタビューを通じてデータ収集し、その成果として論文出版(1本)とオンライン講演会(2回・ソーシャルワーク及び関連領域の専門家対象)を実施した。論文は、マインドフルネス経験がソーシャルワーカー及びがんサバイバーのクライアント双方にもたらした影響をソーシャルワーク実践過程の事例研究としてまとめられた。 また、マインドフルネスとソーシャルアクションの連動を考慮したマインドフルネス・アプローチ考案の必要性に関する総説の出版、この方法論において軸となる関係性マインドフルネス(relational mindfulness)についての学会主催研修の実施、そしてマインドフルネスのトラウマ・ケアにおける有害事象に関する学会発表を完了した。 普及活動として、COVID-19によって延期されていたマインドフルネスに基づくソーシャルワーク専門職エンパワメント・プログラム(MB-SWEP)の研修会を兵庫県社会福祉士会との連携を通じて実現した。令和2年11月から12月にかけて神戸市内の会場にて週1回2時間、計6回の対面及びオンラインの同時開催となった。計28名のソーシャルワーカー及び介護職従事者が参加し、マインドフルネスのプラクティスの実践とマインドフルネスを職場に導入する方法の検討を行った。 さらに、ソーシャルアクションに資するマインドフルネス実践の理念及び実践方法と親和性を有するInward Bound Mindfulness Education(iBme)の資料及び文献レビューとその指導者へのオンラインインタビューを実施し、この新たなアプローチの構築への実践的示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度に米国UCLAを拠点とすることで得た新たな研究の掘り下げ、すなわち臨床的な目的を超えたよりソーシャルワークの価値の体現に資するマインドフルネス・ベーストの実践及びソーシャルワーカーのエンパワメント・プログラムの構築を目指す中で、令和2年度は事例にもとづく論文発表とMB-SWEPの試行に費やされた。しかしCOVID-19の影響が続く中、大きく業務体制が変化したことにより、COVID-19がもたらす新たな差別、偏見に対するソーシャルワーク実践及び現場ソーシャルワークのエンパワメントにマインドフルネスが果たす役割について、その情報の精査と論文化は避けて通れず、研究課題として未整備の状態にとどまることになった。 また、これまで集積してきた研究を総括した「マインドフルネスに基づくSW専門職エンパワメント・プログラム(MB-SWEP)」のホームページ上での開示、さらに研究報告書の最終的な集約もCOVID-19による時間的制約のために未達成となり、今後の課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、令和2年度で完了できなかった以下の項目を研究の最終項目として推進していく:1) COVID-19がもたらす本能的嫌悪感と道徳的嫌悪によって形成された新たな差別、偏見(コロナ差別)に対するソーシャルワーク実践のあり方を考案していくために、本研究で培ったソーシャルワークの価値の体現に資するマインドフルネス方法論の応用可能性について論文化していく、2)「マインドフルネスに基づくSW専門職エンパワメント・プログラム(MB-SWEP)」をまとめ、ホームページ上でその方法論を公開する、3)兵庫県社会福祉士会との協働を通じてMB-SWEPのアドバンスト版のプログラム構成とワークショップを開催し、その効果検証を実施する、4)ソーシャルアクションなどソーシャルワークの価値及び方法との親和性が確認されたiBmeについて、令和2年度で行った集中的なレビュー及び指導者とのインタビューをもとに、実践理論、方法、効果、ソーシャルワーカーへの応用可能性について論文化していく、5)本研究の総括として、研究報告書の冊子をまとめ、SW専門職のエンパワメントに資するマインドフルネスの理論と方法を集約した書籍出版に向けた土台形成を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度全般に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が続くことで、複数の業務体制の見直しが必要となり、研究推進の遅延を余儀なくされた。同時に、学会及びソーシャルワーク関係機関へのCOVID-19関連の情報発信の必要性に迫られ、本研究への時間的制約が生じた。COVID-19がもたらす新たな差別、偏見に対するソーシャルワーク実践及び現場ソーシャルワークのエンパワメントにマインドフルネスが果たす役割について検討することは、本研究全体の志向性に通じる新たな問題提起になると判断し、急遽COVID-19のインパクトを念頭においたマインドフルネスとソーシャルワークにかかわる研究活動に従事したことも次年度使用額が生じた理由となる。 令和3年度は、ソーシャルワーク専門職が直面するコロナ差別の現状とマインドフルネスの効果に関するインタビュー謝金、ホームページの改訂に伴う委託費、兵庫県社会福祉士との協働で実施するアドバンスト版MB-SWEPの効果検証にかかわるインタビュー謝金、そしてiBmeにかかわる情報収集のための資料及び文献複写費として使用する計画である。
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Research Products
(13 results)