2016 Fiscal Year Research-status Report
テトラヒドロビオプテリン欠損がもたらす不安定高血圧症とPriapism
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16K08561
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
一瀬 千穂 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (10247653)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | テトラヒドロビオプテリン / ノルアドレナリン / 一酸化窒素 / 血管 / 交感神経 / 高血圧 / 徐脈 / セピアプテリン還元酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)テトラヒドロビオプテリン(BH4)生合成の第3段階を触媒するセピアプテリン還元酵素遺伝子ノックアウト(Spr-/-)マウスの循環器系表現型を解析し、論文発表をおこなった(Chiho Sumi-Ichinose et al. Sepiapterin reductase gene-disrupted mice suffer from hypertension with fluctuation and bradycardia. Physiological Reports (2017)5:e13196 )。Spr-/-マウスはSPRの欠損によって、血管を含む組織でBiopterinおよびモノアミンが減少するが、離乳後変動の大きい高血圧と徐脈を示した。ECGの周波数解析では、Spr-/-マウスの心臓への交感神経系入力が副交感神経系入力に比べて高いことがわかった。4-7ヵ月齢マウスの胸部大動脈リング標本を用いた血管反応の解析では、アルファ刺激薬による収縮反応が野生型に比べて増強していたが、これはアルファ受容体の感受性亢進ではなく、収縮にかかわる他の機序による可能性が高いと考えられた。アセチルコリンによる弛緩反応は減弱しており、eNOSのタンパク質量には差がなかったが、cofactorであるBH4の不足によるNOの産生障害があると考えられた。またSpr-/-マウスは著明な低血糖を示し、また血漿中のレニン活性は野生型に比べて有意に高かった。 (2)BH4の再還元にはジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)とともに、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)が関与している。DHPR遺伝子ノックアウト(Qdpr-/-)マウスにDHFR阻害薬であるメトトレキサートを腹腔内投与し、BH4/BH2比を変化させ、血管弛緩反応を野生型マウスと比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)Spr-/-マウスの解析について、概要に記した通りの成果を得た。 薬物投与などによってSpr-/-マウスの不安定な血圧、高率に発症するPriapism(持続勃起症)の機序を明らかにすること(2)Qdpr-/-マウスの解析、および(3)BH4によるチロシン水酸化酵素(TH)の安定化に関する課題が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Spr-/-マウスで生じるPriapismのメカニズムとしては、交感神経機能の低下とともにcGMP分解機構の抑制が考えられる。Spr-/-マウスのCorpus CaverosumにおけるnNOS、eNOS、PDE5の発現およびタンパク質量、そのリン酸化型との存在比をRT-PCR、Western Blottingで比較する。PDE5阻害薬のSildenafil、NOS阻害薬のL-NAME,NO放出薬のSodium nitroprussideをマウスに投与して海綿体内圧を測定する。またBH4生合成系はアデノシン代謝ともリンクする可能性があるため、Spr-/-マウス組織中のプリン体の定量をおこなう。 (2)Qdpr-/-マウスにメトトレキサートを腹腔内投与し、BH4/BH2比を変化させ、血管弛緩反応を野生型マウスと比較する。NO代謝物および組織のラジカル生成を測定する。 (3)Spr-/-マウスはじめBH4を欠損させたマウスでは、神経終末でTHの減少が生じる。最近hsp40と相互作用するシャペロンタンパクDNAJC12の変異でジストニアと高フェニルアラニン血症を生じる家系が報告され、この分子がフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)をはじめとする芳香族水酸化酵素の安定性に関係することが示された。芳香族水酸化酵素はいずれもcofactorとしてBH4を必要とする酵素であり、DNAJC12とBH4との関連について検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度はSpr-/-マウスの循環器系フェノタイプの解析を集中的に行ったため、Qdpr-/-マウスの解析やドパミン神経終末でのBH4によるTH制御のメカニズムに関する研究に振り向ける研究費に残額を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度はSpr-/-マウスのpriapismの解析、薬物投与による不安定高血圧への影響、Qdpr-/-マウスの解析等新たな機器・試薬を必要とするものが多いため、残額を生じない予定である。
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Research Products
(5 results)