2017 Fiscal Year Research-status Report
凝集誘起発光色素とAβ凝集促進ペプチドを用いたAβの簡便な定量法の開発
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16K08952
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
村嶋 貴之 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (20263923)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 凝集誘起発光 / アミロイドβ / 親水性 / 水溶性 / ピリジン-N-オキシド |
Outline of Annual Research Achievements |
凝集誘起発光(AIE)色素と生命分子を連結したプローブを用いることで、アミロイドβが定量できることを明らかにしてきたが、実際の生体内濃度は非常に低いため、本研究で開発した手法では検出感度が不十分である。その最大の要因はプローブそのものが発する蛍光である。このバックグラウンド蛍光は、プローブ中のAIE色素が強い疎水性をもつにもかかわらず、バイオセンシングは基本的に水系溶媒中で行う必要があることに起因する。したがって、AIE色素そのものに水溶性を付与することでバックグラウンド蛍光を低下させることができると考えた。 まず、テトラフェニルエチレンの4個のフェニル基のうち1個から4個をピリジル基に置き換えることで親水性を付与した化合物を合成し、それぞれ親水性を確認したが、親水性の向上はわずかであった。そこで、これらの化合物のピリジン窒素を酸化することでピリジンN-オキシドに変換した化合物を合成した。ピリジンN-オキシドは電荷分離した構造をとっているため親水性の向上に対する効果は極めて高く、4つのピリジンN-オキシドをもつ化合物は容易に水に溶解し、一般的な有機溶媒には溶けない性質を示した。これらの親水性、あるいは水溶性AIE色素について蛍光測定を行い、AIEの性質を保持していることを確認した。 これらの親水性AIE色素のうち、3つのピリジンN-オキシドをもつ化合物をアミロイド凝集促進ペプチド(AFPP)に結合させたプローブを作成し、Aβの定量を行った。蛍光測定の結果、Aβの濃度依存的に蛍光強度が変化していることからAβの定量が可能であることがわかった。また、Aβが存在しない場合の蛍光測定から、テトラフェニルエチレンを用いたプローブと比較すると、バックグラウンド蛍光が4分の1以下になっていることから、AIE色素の親水化が感度向上に資する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の目標として、高い水溶性をもつ凝集誘起発光(AIE)色素の合成と、その色素を生体分子とコンジュゲートしたプローブの合成を掲げ、研究を行ってきた。これらの目標は概ね達成されているが、合成した中で最も水溶性の高いAIE色素は、その構造上の特性からコンジュゲート化が困難で、かつ蛍光強度が弱かったため、水溶性を若干犠牲にしてコンジュゲートの作成を行った。平成29年度に作成したプローブは蛍光色素とアミロイド凝集促進ペプチド(AFPP)を用いたものである。えられたプローブを様々な濃度に調整したアミロイドβ溶液に加えて蛍光測定を行ったところ、濃度依存的に蛍光が変化したことからアミロイドβの定量が可能であることがわかった。また、疎水性のAIE色素を用いて同様の検討を行った結果と比較すると、プローブそのものの蛍光が大幅に低下していることから、親水性の付与により感度を向上させようとするアプローチが正しいものであると考えられる。以上の理由から、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
アミロイドβの高感度定量を目指して、水溶性AIE色素とAFPPをコンジュゲートさせたプローブを合成し、これを用いて実際にアミロイドβが定量できることや、水溶性の付与によりバックグラウンド蛍光が低下することが確認された。一方で、親水性のAIE色素はその母体となる疎水性のAIE色素に比べて蛍光強度が低下する蛍光にあり、本研究で合成した色素に限れば、親水性と蛍光強度はトレードオフの関係にあるように見える。したがって、今後は水溶性を保持したまま、蛍光強度が向上したAIE色素の合成がひとつの目標となる。 また、アミロイドβの凝集はAFPPを用いていてもなお、ある程度の時間が掛かることから、測定サンプルの調整から実際の測定までの時間によって蛍光強度(凝集の程度)が変化し、測定値がばらつく傾向にある。したがって、既に合成したプローブを用いて、測定条件を検討し、感度が高く、かつ定量性・再現性の高い結果が得られる測定プロトコルを決定する。
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Causes of Carryover |
学会出張のための旅費として使用する予定であったが、学会期間が公務と重なり、学会出張を取りやめたため、次年度使用額が生じることとなった。翌年度分として請求した助成金とあわせて、物品費や旅費として適切に使用する予定である。
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