2018 Fiscal Year Research-status Report
没入型仮想環境技術を活用した寸法感学習スキーム「スケトレ」の開発とその効果の実証
Project/Area Number |
16K16332
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
馬淵 大宇 岡山理科大学, 工学部, 講師 (50757458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | VR / ヘッドマウントディスプレイ / 寸法感 / 設計教育 / 建築 / デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
建築やデザイン教育において、空間や物の寸法(数値)と実際の広さや大きさ(イメージ)を一致させること(寸法感の習得)は非常に重要とされてきた。このため従来は、図面や模型を用いた演習が行われてきたが、建築空間のような大きな空間を再現し演習することは難しく、この寸法感教育には長い時間がかかっていた。本研究では、新たに没入型仮想環境技術を活用することで、【スケトレ(スケールトレーニング:寸法訓練)】を開発し、その評価を通して、新たな寸法感教育の実現を目指している。 研究実施計画に基づき、平成30年度は下記の3項目において成果を得た。 (1)スケトレ「量」編の追加実験:建築学生10名(男性5名/女性5名)を対象に、スケトレ「量」編を4回実施し、実在する建築物の大きさを目測で評価させる実験を行った。その結果、スケトレ「量」編を繰り返し実施することが、目測の精度を顕著に向上させた。令和元年度は、スケトレ「量」編の単回実施と繰り返し実施の結果を統合して分析し、スケトレ「量」編の効果をより正確に検証する。 (2)スケトレ「質」編の製作:寸法が示された有名建築物を体験し、その建築物の寸法体系を具体的なイメージと共に学習できるシステムを製作した。具体的には、サヴォア邸をRevitを用いて忠実な3Dモデルとして作成し、建築細部まで寸法表示できるシステムを構築した。 (3)スケトレ「質」編の実験による検証:サヴォア邸のトレース課題を終えた直後の建築学生12名(男性6名/女性6名)を対象に、スケトレ「質」編を実施し、トレース時の図面を基に把捉されたサヴォア邸のイメージに変化があるかを評価させた。その結果、スケトレ「質」編を行うことで、図面でイメージした建築物の大きさ等の印象に変化が確認された。令和元年度は、追加の分析を行うことにより、スケトレ「質」編の効果をより正確に検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に発生していた研究の遅れを挽回することができたため、本研究はおおむね順調に進展している。ただし、研究を進める中で、時間と費用の不足や、所属機関の変更に伴う研究環境の変化等を理由に、研究協力者との検討の末、スケトレの製作内容や教育効果の検証方法に必要な調整を加えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、スケトレ「量・質」編共に追加の分析を実施し、スケトレの教育効果をより正確に明らかにする。また、論文やホームページ等を介して、本研究の成果を幅広く公開する。最後に、当初の計画からの調整が必要な箇所とその対応策は、主に以下の2点である。 (1)スケトレの製作内容の調整:スケトレの品質向上やVR提示装置のサポート終了に伴う基盤ブログラムの変更を図るために、時間と費用を要した。そのため、当初の計画よりも、小規模なスケトレに調整する必要があった。しかしながら、スケトレ「量・質」編それぞれの教育効果を実験により検証した結果、現状のスケトレにおいて十分な教育効果が見込まれた。今後は、得られた結果の分析に注力し、スケトレの教育効果をより正確に検証することに重点を置く。 (2)教育効果の検証方法の調整:所属機関の変更に伴い、申請当時に前提としていた研究環境と状況が大きく異なる問題が生じた。特に、スケトレの導入を予定していた演習科目の運用形態が変化した影響は大きい。具体的には、計画していた「スケトレの講義による検証」の実施が困難になった。そこで、対応策として、実験によるスケトレの教育効果の検証を強化したり、既存の演習科目の内容を一部利用した実験を実施したりすることで、検証精度の低下を防いだ。
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Causes of Carryover |
(理由)主な理由は、所属機関の異動等により、申請時に必要と考えられた1回当たりの旅費が少なくなったことになる。 (使用計画)論文やホームページ等により本研究の成果を幅広く公開する費用や、それに伴う機材の拡充に使用することを計画している。
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Research Products
(3 results)