2008 Fiscal Year Annual Research Report
統合的研究手法による眼球・上肢運動制御における大脳運動関連領野の機能解明
Project/Area Number |
17021041
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
伊佐 正 National Institute for Physiological Sciences, 発達生理学研究系, 教授 (20212805)
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Keywords | 脊髄損傷 / 精密把持 / 皮質脊髄路 / 運動野 / 霊長類 / 遺伝子発現 / 可塑性 / リハビリテーション |
Research Abstract |
これまでの研究で、サルにおいて皮質脊髄路を頚髄C4/C5レベルで傷害したのち、手指の精密把持運動は一時的に障害されるが、訓練により1-2か月の経過で回復することを見出した(Sasaki, et.al. 2004)。そして、このような機能回復モデルを用いて中枢神経損傷後の機能回復過程を様々な側面から解析してきた。本年度は、健常サル4頭、損傷後2週間のサル4頭、損傷後3か月のサル4頭の両側の一次運動野手指領域、運動前野背側部、運動前野腹側部の組織を採取して、マイクロアレイによって発現遺伝子を解析した。その結果、発現が大きく変動した遺伝子については、損傷反対側一次運動野(M1)においては2週間後にその数が大きく増加した後、3ヵ月後では現象しているのに対して、両側の運動前野背側部(PMd)や運動前野腹側部(PMv)及び同側のM1においては3ヶ月後にかけて大きく発現が変化する遺伝子の数が増大することが明らかになった。また、変化する遺伝子の内容も、両側のPMd, PMv及びそれら同士の間では共通していたが、損傷反対側のM1とは大きく異なっていた。このように損傷直後に反対側M1でおきる変化の内容と運動前野で回復安定期にかけて起きる変化の内容は異なることが明らかになった。また、それぞれの領域全体の遺伝子発現様式に差のみられる遺伝子については、2週間後に大きく減少し、そして3ヵ月後に再度増加すること、そしてその内容は健常サルとは異なるものが多いことも明らかになった。この結果は、損傷後、領域間の遺伝子発現が一度未分化な状態になり、その後再度分化する可能性を示唆している。現在、発現を変化させる遺伝子の内容について詳細に解析している。
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