Research Abstract |
作用スペクトル解析による光触媒反応機構の解析:昨年度までにひきつづき,既存の多波長分光照射装置をもちいて各種光触媒反応の作用スペクトル解析および作用スペクトルの光強度依存性解析を行った.主要な成果としては,(1)光触媒活性の評価法としてひろく採用されているメチレンブルーの退色反応が,自己光反応によっても進行することを明らかにし,必ずしも光触媒活性の評価には適切でないことを示した.(2)領域内の共同研究者から提供された硫黄ドープ酸化チタンが可視光域の光照射によって光触媒活性を示すことを明らかにした.(3)金微粒子を担持させた酸化チタンを酢酸水溶液に懸濁させた反応系について,金粒子の表面プラズモン励起による光触媒反応が,400-600nmの波長領域で進行することを明らかにした. 光音響スペクトル(PAS)解析による光吸収および再結合過程の解析:光触媒反応の作用スペクトルは,光触媒の光吸収スペクトルと,励起電子-正孔の反応効率スペクトルの積であるので,光吸収スペクトルを正確にもとめることができれば,励起電子-正孔の反応効率スペクトル,すなわち,光触媒反応の真の量子効率を知ることができる.しかし,従来の測定方法である,光触媒粉末の拡散反射スペクトル法では,原理的に正確な吸収スペクトルを得るのが難しい.本研究では,光触媒粉末が光吸収して生じる励起電子-正孔の再結合による熱発生を観測する光音響スペクトル(PAS)法が,拡散反射スペクトル法とはちがって粉末粒子による光散乱の影響をうけないことに着目し,これを用いた正確な吸収スペクトルの取得ができることをさまざまな酸化チタン光触媒について実証した.さらに,強い連続光を照射して光触媒反応を起こさせながらPAS測定を行う測定系を構築し,光触媒反応中の光触媒の光吸収の変化を追跡することに成功した.
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