2006 Fiscal Year Annual Research Report
脱髄性神経損傷に起因する難治性神経因性疼痛の治療標的分子の同定
Project/Area Number |
17109015
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
植田 弘師 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (00145674)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澄川 耕二 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (60028660)
井上 誠 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 講師 (60380987)
藤田 亮介 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (70380855)
|
Keywords | リゾホスファチジン酸 / 神経因性疼痛 / 脱髄 / ミエリン蛋白質 / LPA合成酵素 / ex vivo解析 / LPA産生 / スプラウティング |
Research Abstract |
本年度は大きく分けて以下の3つの項目に関する成果を得ている。 1)LPA誘発性脱髄形成シグナル伝達機構。脊髄後根の切片培養によるex vivo脱髄評価系を確立し、in vivo同様、電子顕微鏡下でLPA処置により脱髄が誘発されることを証明した。LPAの処置はミエリン関連蛋白質遺伝子とその上流に位置する、転写因子EGR2とSOX10の発現を減少させ、いずれもRhoA-ROCK活性化と関連することを見出した。現在受容体から遺伝子発現制御までの情報伝達機構を解明中である。一方、ミエリン関連蛋白質の分解機構についても解析を試みており、その制御機構は遺伝子発現調節とは全く異なり特定の分解酵素の活性化と関連があることが阻害剤を用いた研究から明らかになった。2)神経傷害時の触覚神経誤入力の証明。神経傷害時の脱髄部位において、ミエリン蛋白質MAGの発現低下と神経突起発現マーカーであるGAP43の発現上昇が観察された。一方、電子顕微鏡観察において有髄A線維と無髄のC線維間の直接の接触が観察された事実から、神経傷害後の脱髄に伴う神経発芽(スプラウティング)現象が線維間の接触に関連することが示唆された。この事実は、非侵害性と侵害性線維間の混線によるアロディニア現象をうまく説明するものである。侵害線維刺激直後、脊髄後角においてリン酸化ERKが著明に観察されるが、非侵害線維の刺激では観察されない。しかし、神経傷害時には非侵害線維刺激によっても、脊髄後角に著明なリン酸化ERKシグナルが観察された。こうした事実は神経因性疼痛時のアロディニア機構に、脱髄と関連の深いエファプスや神経回路再構築が関与することを示唆している。現在、電気生理学的証明は名古屋市立大学・小野教授との共同研究のもとで遂行しているところである。3)神経傷害時の脱髄現象の部位特異性とLPA産生。坐骨神経傷害後のLPA感受性脱髄現象は脊髄後根においてのみ観察したが、坐骨神経、脊髄神経、あるいは脊髄後根を用いた切片培養系におけるLPA適用による脱髄現象はどの部位においてもほぼ同程度であった。さらにLPA合成酵素(LPLD)ならびにLPA1受容体の発現量にも差が認められなかった。従って、LPA産生の部位限局性が大きく関与する可能性が示唆された。LPA合成酵素のLPLDに対するAS-ODNの脊髄クモ膜下腔適用により神経傷害誘発性アロディニア現象が抑制されることを見出し、神経傷害後に脊髄においてLPA産生がおこる可能性が示唆された。神経傷害後に脳脊髄液中のLPA濃度が上昇するという事実はこの仮説の正当性を支持している。
|
Research Products
(5 results)