2009 Fiscal Year Annual Research Report
脱髄性神経損傷に起因する難治性神経因性疼痛の治療標的分子の同定
Project/Area Number |
17109015
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
植田 弘師 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00145674)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澄川 耕二 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (60028660)
内田 仁司 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 技能補佐員 (30549621)
|
Keywords | リゾホスファチジン酸 / 神経因性疼痛 / WGAトランスジーン法 / 脊髄損傷 / LPA de novo合成 / 線維筋痛症 / Mass imaging / 脱髄 |
Research Abstract |
本研究は難治性の神経因性疼痛の分子基盤を解明するために、神経因性疼痛の原因分子として発見したリゾホスファチジン酸(LPA)による脱髄とそれに伴う可塑的変調機構を明らかにすることを主題としている。本年度は、神経損傷後におけるLPAのde novo合成の分子基盤について詳細な研究を行った。すでに確立したバイオアッセイ系を用いて、神経損傷後の脊髄ではiPLA_2とcPLA2の活性化を介してリゾボスファチジルコリン(LPC)が産生され、さらにオートタキシン(ATX)によりLPAに代謝されることを明らかにした。さらに、脊髄切片を用いたex vivo実験において、LPA添加は時間依存性のLPC産生を誘発し、このLPCはATXによりLPAに変換された。このLPA産生におけるフィードフォワード性増幅機構はLPA_3受容体遺伝子欠損マウス由来の標本において完全に消失した。次に、神経損傷及びLPAによる脱髄の分子機構として、ミエリン蛋白質の分解に着目し、脊髄後根におけるカルパイン活性化の関与を見出し、さらに複数のカルパイン阻害剤により脱髄と神経因性疼痛が遮断されることを明らかにした。慢性炎症性疼痛モデルではこの現象は観察されず、LPA_1受容体機構の観点において神経因性疼痛と炎症性疼痛の明確な相違点を見出した。また、ミエリン蛋白質の遺伝子発現低下についてもLPA_1受容体機構の関与を明らかにした。一方、中枢性の慢性疼痛については、LPA視床投与による視床痛モデルにおいてLPA_1受容体を介したミクログリア活性化の関与を見出した。また、冷温繰り返しストレス負荷による線維筋痛症モデルにおいて、モルヒネ鎮痛効果が減弱すること、およびその分子基盤として脊髄後角におけるセロトニン代謝回転が低下することを見出した。こうした下降性機構の変調もまた慢性疼痛のフィードフォワード機構として重要であることを明らかにした。
|
Research Products
(37 results)