Research Abstract |
脳認知計算モデルを用いた他者の認知過程のモデル的再現を含む行動予測を実現するため,現実環壌における行動決定の認知モデルの構築と,行動課題によるその検証を行なった.具体的には,実験室での緻密な行動分析と実世界での行動として運転場面での行動決定過程のモデル構築を同時並行で行なった.実験室課題として,Matching penniesと呼ばれる対戦ゲームについて,その行動決定過程の動的スイッチングとして計算モデル化して計算機シミュレーションを行ない,定型発達および高機能自閉症の被験者の行動と比較した.その結果,我々の行動決定にはそのスイッチングに関するパラメータがあり,対象の認識によってそれが再設定される,という脳内過程の存在が示唆された. 現実場面として自動車の運転者の視線の動きと環境とを計測し,タグ化することで視線の動きをシミュレーションに必要な環境データを入手した.また擬似的な運転環境をコンピュータグラフィックスで作成し,その環境での視線の動きの再現を試みた.その結果,視線の動きの決定要因として,従来から言われてきた環境のsaliency,事物の観測,運転プランに基づく視線に加え,衝突の可能性の認識による視線の動きを加えた運転者モデルの構築ができた. 対人ゲームおよび運転モデルの両者において,被験者/運転者の対人認識・行動決定のためのメンタルモデルが重要である.対人ゲームではそれは自己の行動決定のパラメータと対人認識の連合関係であり,運転者モデルでは環境における対向車の発生確率分布と環壌認識の連合関係であった.個々の課題において具体的なモデルは異なるが,その基本構造は状況→行動決定パラメータの連合であり,この研究の結論としてその一般性を検証する課題の開発が必要とされることが明らかとなった.
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