2006 Fiscal Year Annual Research Report
超高解像度"温暖化"実験とマルチスケール水文モデルによる世界の洪水渇水変動の評価
Project/Area Number |
17360239
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
鼎 信次郎 総合地球環境学研究所, 研究部, 助教授 (20313108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 由希子 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助手 (60377588)
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Keywords | 気候変動 / 水工水理学 / 水資源 / 水循環 / 自然災害 |
Research Abstract |
高解像度気候変動シミュレーションのアウトプットを元に、全球スケール、大陸流域スケール、都市スケールのマルチスケールにおいて、地球温暖化下の洪水・渇水の変動の見込みを推定することが、本研究の目的である。全球スケールにおいては、観測降水量と気温をベースにした20世紀過去100年の洪水・渇水再現計算と、そのような観測値を用いない20世紀気候再現実験からの洪水・渇水の計算結果とを比較することによって過去再現性を検証するとともに、予測を信頼するならば21世紀はインドシナ、サヘル、西ヨーロッパなどで渇水・洪水ともに酷くなることを示してきた。本年度は、そのような将来変化に関して、モンテカルロシミュレーション手法を用いての統計的妥当性の検証を行った。その結果、2030年前後などの近未来では有意性はそれほどではないが、21世紀終盤の洪水渇水変動は十分な有意性を有することが示された。ガンベル分布に当て嵌まると仮定するならば、100年に一度程度の洪水が10-20年前後に一度生ずる地域も多くなる。また、これまでの結果で洪水の増加などが示されていたサハラ地域では、モンテカルロの結果として有意性が棄却された。これも妥当な結果であるといえる。これらの成果を論文にまとめ国際誌に投稿した。 大陸流域スケールとしては、黄河を対象として過去の検証を行った。その結果、1990年代の黄河の断流(を引き起こした流量減少)のうち半分弱程度は当時の気候の変動に起因することが分かった。これより、たとえ人為的な取水量が現在レベルで推移したとしても、将来の気候変化次第では再び断流が生じる可能性があることが示唆される。また、メコン川を対象として、温暖化による河川流量変化のシミュレーションを行った。その際に、降水や気温の変化からバイアスを簡単に補正する手法を取り込んだ。これらの成果については論文を投稿中である。 渇水については、特に、既存の水ストレス指標の意味するところについて検討を行った。既存の指標はどちらかというとマネジメントの難しさ、生態系への影響、地下水への負荷などを暗示するものであることが判明し、水文渇水の指標として適切なものを調査・考案しつつある。
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Research Products
(5 results)