2006 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素特異的遺伝子を活用した窒息の法医病理学的診断法の確立
Project/Area Number |
17390202
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中園 一郎 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (30108287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 亮一 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 講師 (20098875)
池松 和哉 長崎大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教授 (80332857)
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Keywords | SAGE法 / 窒息 / 頚部圧迫 / マウス / 脳 / IEG s |
Research Abstract |
Serial Analysis of Gene Expression (SAGE)法は、遺伝子の転写発現状態を多面的にかつ詳細に検討・解析できる唯一の方法である。しかしながら、その手技の煩雑さによりしばしば実験途中でTagを失うこと、また、Tagの短さにより異なる遺伝子でも同様のTagを有してしまう欠点があることも知られている。我々は、Tagを多量に取得でき、また、Tagの長さをより長くできるSAGE法の欠点を改良したMicro and Long SAGE (ML-SAGE)法を開発した。この方法によって容易に良質のTag cDNA Libraryを構築できるようになり、ML-SAGE法を利用してマウス前脳皮質における窒息特異的遺伝子を検索した。具体的には頚部圧迫処置を施し死亡したマウス(Hanging群)と断頭処置したマウス(Control群)よりRNAを抽出し、ML-SAGE法にてTag cDNA Libraryを構築し、Tag情報を解析した。その結果、Hanging処置マウスで12094Tag、1827遺伝子、Contro1マウスで12590Tag、1889遺伝子の発現が認められた。両者の比較にて、Hanging処置マウスでRho BやLrrn 6等の遺伝子が増加し、Baiap 2やFkbp 8等の遺伝子が減少していた。この結果は、定量的PCRにて確認し、統計学的に有意な差も認められた。従って、これら遺伝子が窒息特異的遺伝子であることが示唆される。また、これらの遺伝子発現に変化が認められたことから、Immediate Early Gene (IEGs)に着目し、その発現を確認したところ、C-fos発現量は、Hanging群1.43+/- 0.17、Control群0.25+/- 0.08であり、Fos-B発現量は、Hanging群0.62+/- 0.19、Control群0.21+/- 0.06で、統計学的検討の結果、Hanging群とControl群では両遺伝子の発現量に有意な差が認められた(p<0.01)。今回の結果より、窒息時にはIEGsを含めた種々の遺伝子発現が生じていることが確認された。今後、窒息死を中心として法医剖検脳について本結果を応用し、新しい窒息死の法医病理学的検査法を確立したい。
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