2007 Fiscal Year Annual Research Report
てんかん焦点部における微小形成不全の診断基準策定のための神経病理学的解析
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17500245
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
新井 信隆 Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research, 東京都神経科学総合研究所, 参事研究員 (10167984)
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Keywords | 難治性てんかん / 微小形成不全 / 脳形成異常 / 外科病理 / 機能的脳外科 / 神経細胞異動障害 |
Research Abstract |
てんかんの焦点部に意外に多く潜在していると考えられている器質的な病変に微小形成不全があることが近年、指摘されているが、その病理学的な診断基準は明確でないのが現状である。特にてんかん外科治療の領域ではこれらの診断基準を明確にすることが求められ、これらの課題に一定の結論を得るために本研究は遂行されててきたところである。 代表者の部門内に所蔵しているヒト剖検脳パラフィンブロック(全2,000例余)のうち、代表的な神経疾患の中でいくつかの疾患群を設定し、上中下の前頭回、上中下の側頭回、中心前回、中心後回、島回、海馬、海馬傍回、後頭側頭回、後頭葉脳回を対象として標本化した。未だ認知されていないオカルト皮質異形成(画像で検出できない細胞レベルの異形成病変)を探索する為、そのうち、多数例の限局性皮質異形成(FCD)、片側巨脳症(HMC)、結節性硬化症(TS)の主病変の周辺部を検証した結果、FCD、HMCの周辺部では主病変部に連続して、一見正常な6層構造の中に異型神経細胞が孤発する皮質領域に移行することがあることを確認した。また、それらの異型細胞は、多くの神経系モノクローナル抗体を用いたパイロット検索の結果、抗β-catenin抗体で正常形態の神経細胞と免疫組織学的にも識別可能であることを確認した。具体的には、非異型性神経細胞においては、β-catenin染色では微細な顆粒状構造物を細胞質内に認めるのみであるが、FCD,HMC、TSの特徴とされる異型神経細胞では、β-catenin染色において、細胞質内に粗大な陽性構造物の集積として観察された。これらの違いは光顕的にも容易に識別することが可能であり、両者における発達過程の違いを示す免疫組織学的なhall markと考えられた。これらの結果は、異型細胞が孤発する「オカルト皮質異形成」の存在を支持するものである。
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