Research Abstract |
1)本年度は健常例,拡張型心筋症,虚血性心疾患,高血圧性心臓病,肥大型心筋症および発作性心房細動の症例について,症例をさらに増やして左房機能の詳細な検討を行った.心エコー検査を行った連続症例において,上記疾患では心尖部四腔断層図を記録し,off-lineで左房容積曲線を構築して収縮期最大左房容積,受動的左房容積減少量,心房収縮期能動的左房容積減少量などを算出して,左房の受動的仕事量および能動的仕事量の疾患による差異を検討した. 2)その結果,健常例における各時相の左房容積および左房仕事量が判明し,左房の受動的駆出量よりも能動的駆出量が有意で,健常例では心房収縮期の左房駆出が重要な役割を果たしていることが判明した.また,最大左房容積がその後の左房の容積や仕事量を規定していることも判明した,さらに,同様の左房負荷を有する拡張型心筋症と虚血性心疾患でも,左房心筋に障害を有すると考えられる拡張型心筋症では,虚血性心疾患と異なり,左房の能動的駆出量の減少により,左房の前方駆出が障害され,左房負荷が増大していることが判明した.同様のことは肥大型心筋症と高血圧性心臓病でも認められた. 3)下半身陽圧負荷を行うことにより,左房のリザーバー機能とポンプ機能を詳細に検討することが可能であるが,左房心筋の障害を有すると考えられる拡張型心筋症や肥大型心筋症では,左室側の障害のみの虚血性心疾患や高血圧性心臓病と比ぺて,前負荷増大に対して異なった反応を示した.重篤な左房心筋障害を有する拡張型心筋症や肥大型心筋症では,前負荷増大により左房圧が上昇し,肺うっ血を来たしやすい状況に変化した,これらの反応の差異を検討することにより,臨床で心不全を来たしやすいか,そうではないかを簡便に判断しうると考えられた. 4)これらの結果は,日本心臓病学会,日本循環器学会および世界超音波学会で報告したが,症例をさらに増やしてCirculation, J Am Coll Cardio1などの英文紙に投稿する予定である.
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