2005 Fiscal Year Annual Research Report
アンティベラム南部奴隷制下に見られる共同奴隷耕作地の役割
Project/Area Number |
17520511
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata Sangyo University |
Principal Investigator |
沼岡 努 新潟産業大学, 経済学部, 教授 (10156151)
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Keywords | 黒人奴隷制 / 奴隷耕作地 / アメリカ史 / アメリカ南部史 / テキサス州 / ルイジアナ州 / 菜園 / 共同耕作地 |
Research Abstract |
本研究の目的は、アンティベラム奴隷制下に見られた共同奴隷耕作地の役割について、奴隷主による運営方法・工夫を中心に析出することにある。平成17年度はテキサス州を中心に分析した。結果は以下の通りである。 テキサス州は奴隷州としては新興地域であったことから、他の奴隷州に比べ大プランターが少なく、企業家的中小プランターが利潤追求型のプランテーションを経営した。奴隷耕作地はこうした資本主義的、利潤追求型プランターにより、奴隷に労働意欲・刺激を与えるものとして与えられた。家族や個人単位の耕作地のほか、耕作奴隷の共同耕作地として「特別な綿花畑」、「菜園」、「タバコ畑」などが許可された例が見出された。奴隷全体の労働生産性極大化を狙った奴隷主の策と解される。また、スティーヴン・ペリーのように個人用耕作地を与えながらも、実際には奴隷間の耕作地貸借や耕作地における奴隷相互のhiring systemを許すなど、耕作地における奴隷協働体制を実践した例も明らかになった。 アラバマ州の分析では、一見common fieldに見えながらも耕作地を性や年齢を基準に細分化し、耕作地全体の作物収益をその基準をもとに配分する、いわばcollective fieldの存在を知り得た。ルイジアナ、ミシシッピの分析からは、家畜・家禽類の飼育が耕作地機能の重要な部分を占めていた点、また奴隷と奴隷主の家畜・家禽の区別が時として争点になり、結局奴隷主が家畜を所有する奴隷全員の連帯責任として処理した例などを確認した。家畜・家禽飼育の点においても奴隷の共同責任性を奴隷主が重視した点、明らかとなった。 その他関連事項として、共同耕作地以外にも「共同炊事場・食事場」(Common Kitchen)や「燃料材置き場」(Wood Patch)など、耕作奴隷全体の管理・統制策が採られていた点も分かった。
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