2006 Fiscal Year Annual Research Report
アンティベラム南部奴隷制下に見られる共同奴隷耕作地の役割
Project/Area Number |
17520511
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Research Institution | Niigata Sangyo University |
Principal Investigator |
沼岡 努 新潟産業大学, 経済学部, 教授 (10156151)
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Keywords | 黒人奴隷制 / 奴隷耕作地 / アメリカ史 / アメリカ南部史 / サウス・カロライナ州 / ジョージア州 / 奴隷菜園 / 共同耕作地 |
Research Abstract |
平成18年度はサウス・カロライナ州、ジョージア州を調査対象とした。分析の結果は以下の通りである。 両州のプランテーション記録を夏期調査した範囲では、共同奴隷耕作地は沿岸米作地帯よりも内陸部綿花プランテーションにおいて多く確認された。さらにその綿花プランテーションにおいても、共同耕作作物は必ずしも綿花とは限らず、常食必要度の高い、かつ栽培上手間のかからないとうもろこしの場合も見出された。 これまでの研究で、共同奴隷耕作地は他形態の一家族や個人単位の一奴隷耕作地と同様、奴隷主が奴隷に労働意欲・刺激を与えるべく導入したものであった点は立証された。では、この奴隷主の意図は共同奴隷耕作地の運営方法・工夫にいかに表出したか。この問題に対して、18年度調査はかなり踏み込んで分析することができた。すなわち、奴隷共同耕作地の多くは、耕地や収穫の「共同」に起因する個々の奴隷の労働意欲低下を防ぐため、予め広い耕地を1、1/2、1/4エーカー等に分け、奴隷個々人の力量に応じてこれらの耕地を分け与える例が多い。一見、個人耕作地のように見える-この点で個々の奴隷の労働意欲を引出そうとした-が、労働は奴隷主のためのプランテーション耕地労働に組み込まれた-この点で奴隷は自分たちの作物のみに傾注する訳にはいかなくなる-昼間協同労働の形を採り、収穫も個人単位ではなく共同奴隷耕作地全体-時には隣接プランテーション作物と合わせて-で行われた。各奴隷の収益は、各自のエーカー数に応じて比例配分された。 こうした共同奴隷耕作地は奴隷制下だけにとどまらず、奴隷制廃止後も一定期間、解放民による労働形態の中に継承されていった。後の時代への継承性が確認できた点も成果であった。
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