2007 Fiscal Year Annual Research Report
アンティベラム南部奴隷制下に見られる共同奴隷耕作地の役割
Project/Area Number |
17520511
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Research Institution | Niigata Sangyo University |
Principal Investigator |
沼岡 努 Niigata Sangyo University, 経済学部, 教授 (10156151)
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Keywords | 黒人奴隷制 / 奴隷耕作地 / アメリカ史 / アメリカ南部史 / 奴隷菜園 / 共同耕作地 / 開放放牧地 / 家畜飼育 |
Research Abstract |
平成19年度はヴァージニア、ノース・カロライナ、及びアラバマ、ミシシッピ各州を調査した。調査結果は以下の通りである。 これまでの調査・分析から、共同奴隷耕作地では綿花、米等の主要商品作物よりも、とうもろこしなどの奴隷常食作物を栽培するケースが多いことが分かっていたが、今回の調査においてもやはり同様の結果であった。この点、共同奴隷耕作地共通の特徴として確認できた。さて、今回の最も大きな収穫は次の2点であった。(1)共同奴隷耕作地運営上の奴隷主による創意工夫点を明確化できたこと、(2)家畜飼育(奴隷が作物栽培同様、「奴隷耕作地」で力を入れた活動)に関して、奴隷間のみならず奴隷主との共同利用性が判明したこと、などである。 (1)について:奴隷主はプランテーション耕地内の畑1枚分-「畝」単位で個々の奴隷に割当てることもあった-を共同奴隷耕作地に充て、プランテーション耕地労働中に少数の奴隷が日替り交代制で自分たちの共同耕作地で働くことを認めた。耕作奴隷の場合には一般に奴隷個々人の労働能力が格付けされていたので、共同耕作地労働をプランテーション耕地労働と全く区別なく行い、共同奴隷耕作地から上がる収穫量を格付けに基づいて比例配分する奴隷主もいた。あるいはまた、年齢、性、力量等により、個々人に割当て耕地面積を教えておき、労働はプランテーション耕地労働と区別なく行い、全収穫量から自分の割当て面積分の収益を得る方法も見られた。更にこの方法を推進め、全作物収益の一部を金で奴隷に与える方法一もはや共同奴隷耕作地運営を飛び越えた策-もあった。 (2)について:当時、南部では共有権に対する私有権の優位性が確立されておらず、プランテーション隣接地(森、低地帯、沼沢地等)は「開放放牧地」とされ、奴隷でも慣習上放牧が可能であった。焼印・目印をっけた奴隷たちの豚、牛が-当然、奴隷主の家畜も-放たれていた。終牧時には奴隷主は家畜を収穫後のプランテーション耕地に入れたが、その際奴隷の家畜も一緒に入れられることもあった。以上のように、共同奴隷耕作地政策は、プランテーション全体の効率的・能率的運営の一環として、だが極めて重要な労働政策として行なわれたのであった。
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