2005 Fiscal Year Annual Research Report
米中台関係における「戦略的曖昧性」-3時期を通した「相互イメージ」と「抑止効果」
Project/Area Number |
17530135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
伊藤 剛 明治大学, 政治経済学部, 教授 (10308059)
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Keywords | 米中台関係 / 戦略的曖昧性 / 台湾海峡危機 / 台湾関係法 / 米中関係 |
Research Abstract |
2005年度は、主に「戦略的曖昧性」に関する理論的検討と同時に、計画書で掲げた3時期(50年代、70年代、冷戦後)全体を通じて、この「曖昧性」がどのように適用されてきたのかに関して資料を収集し、何本かの論文を執筆した。 より具体的には、「曖昧性」の概念に関して、アメリカの中国・台湾専門家がこれをどのような含意で用いているか英語文献を用いて検証した。大陸に武力行使の可能性を思い留まらせ、同時に台湾に対して現状変更を促すような「独立」を回避するという双方の目的を達成するために、歴代のアメリカ政権は、意図的に中台関係への介入を押さえてきた。その背景には「強制外交」という武力を誇示するけれどもそれを実際に使用する「意図」は大きくないという冷戦時代に特異な状況が存在したことを解明した。同時に、大陸が威圧的な政策を取れば取るほど、台湾の「民主主義」が米国に対して説得力を持っていたのに対し、冷戦終結以降の米中関係においては、中国の「新安全保障観」に代表されるようなソフトな外交態様が、米中関係の良好化を促しており、逆に台湾の国際的地位が揺らいでいることが分かった。 具体的に「戦略的曖昧性」の中台双方での適用に関しては、資料収集を開始した段階であり、まだ明確なことは言えないが、既存の文献の範囲内では、50年代のアイゼンハワー政権の際に、台湾の地位をめぐって米中間で「現状固定」を目指す意見が大勢を占めたことを確認し、と同時に、その枠組みが70年代の米中国交正常化と台湾関係法体制においても引き継がれた。そのため、今日の時点から見ると、冷戦時代の枠組みと現在の間に齟齬が見られることは事実である。 今後は、こういった概念と政策とを入手できる使用を用いて、より深く調査する予定である。
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Research Products
(2 results)