2006 Fiscal Year Annual Research Report
米中台関係における「戦略的曖昧性」-3時期を通した「相互イメージ」と「抑止効果」
Project/Area Number |
17530135
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
伊藤 剛 明治大学, 政治経済学部, 教授 (10308059)
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Keywords | 戦略的あいまい性 / 米中関係 / 米中台関係 / 台湾関係法 / 同盟 / 平和的台頭 / 米中戦略対話 / 新安全保障観 |
Research Abstract |
2006年度は、米国の対中・対台湾政策における「戦略的あいまい性」に関して、1970年代以降を中心にサーベイした。その中で明確になったことは、米中台関係の基盤が形成された1970年代の段階で、中国の将来における経済発展と台湾の民主化は想定されておらず、現在のような中国の「平和的台頭」や、台湾の民進党政権は、「予測せざる事態」であったことである。それだけに、現在の台湾関係法では、武力による威嚇を国家政策の前面に出さない中国、また、台湾の独立を求める国民党とは異なる政党には、十分に対処できないということである。1990年代後半以降においてこのような事態が急速に展開しており、米国による対アジア政策の根幹が今日揺らいでいることを明らかにできた。 また、研究の過程で現地調査を行い、当地の学識者に対してインタビューを何度か行った。その中で90年代以降の日本の安全保障政策に対して懸念が大きくなっていることも明らかになった。日本としては、米国との同盟の多元化やグローバル化の一環として日米同盟の刷新をおこなっているつもりだが、近隣諸国はそのように認識していない。この現象は、大陸中国に必要以上の憂慮を与え、逆に台湾に必要以上の期待感を与えることになっている。とくに台湾の民進党関係者からは依然として日台の安全保障関係が今後発展するかのような意見も聞かれたし、また、中国からは、日米同盟における日本の軍事化を抑える「ブタ」としての機能が次第に減退しているのではないかという意見が聞かれた。 国際政治においては、往々にして相手国に与える「イメージ」と、実際に展開されている「政策」との間に乖離が存在する。「戦略的あいまい性」の変容は、中国の経済大国化に伴って徐々に明らかになってきた。今後は、その変容の過程をさらに詳細に検証する予定である。
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Research Products
(1 results)