2006 Fiscal Year Annual Research Report
介護施設におけるリスクマネジメント実践にむけた実証的研究
Project/Area Number |
17530425
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Research Institution | OSAKA PREFECTURE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
関川 芳孝 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (10206625)
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Keywords | リスクマネジメント / 介護事故 / 注意義務 |
Research Abstract |
今年度は、研究の二年目最終年に当たり、アメリカの医療施設および介護施設におけるリスクマネジメントに関する文献の内容を考察するとともに、リスクマネージャーからの聞き取り調査および事故報告書の分析を行った。これらの内容を一年目に実施した調査の考察ととともに、介護施設におけるリスクマネジメント実践の課題に関する報告書をとりまとめた。 アメリカの文献研究からは、介護事故の幾つかのパターンごとに、事故発生のベンチマークを設定し、これをもとに優れた取り組みを行っている施設の実践を参考にし、再発予防の取り組みを行い、対策の効果を検証するという手法が示唆的であった。わが国においては、介護事故についてベンチマークをとりいれた改善の手法はとられておらず、介護施設におけるこうした手法の有効性の検証が今後必要であると考える。 リスクマネジメントの実践において、何が阻害要因となっているかについて調査したところ、第一に、リスクマネージャーは、もっと経営者や施設長などトップ・マネジメントのより積極的な関与が必要と考えており、業務範囲や権限の明確化などにおいて、トップの関与が乏しいこと、第二に、連携が必要とされるべき部署ごとに取り組み姿勢にズレがあり、十分な意思の疎通および連携がとれないこと、第三に、現場の職員の意識がリスク要因の改善に向かないことなどがリスクマネジメント推進の上で阻害要因となっていることが明らかになった。 介護施設から提供された約600ケースからなる事故報告書の分析し、幾つかの事故のパターンを類別するとともに、現在とられている対策を聞き取りした。その上で、事故の傾向と対策について検討し、事故パターンごとに事故発生状況を細かにインタビューすると、幾つかのパターンについては、有効な対策がとられていないことが明らかになった。また、事故被害について「特変なし」と報告されたものを分析すると、事故発生の構造から重大事故となっても不思議ではない事案を幾つか検証できた。
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Research Products
(1 results)