2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17F17805
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊丹 健一郎 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 教授 (80311728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KRZESZEWSKI MACIEJ 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2017-11-10 – 2020-03-31
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Keywords | キラルナノグラフェン / APEX / 縮環π拡張反応 / ヘリセン / 湾曲ナノグラフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年材料化学分野や有機エレクトロニクス分野で注目されているナノグラフェンや多環芳香族炭化水素(PAH)などの平面シー ト状分子に対し、「湾曲」と「キラリティー」の二つの要素を新たに取り入れたキラル湾曲ナノ グラフェン類の合成を検討す る。これまで「キラル」なナノグラフェンや、「湾曲」したナノ グラフェンはそれぞれ単独で合成されてきたが、両者を融合 させた分子群を明確に構造を制御して作り分けた例は非常に少ない。同氏は当該受け入れ研究室で得意とするナノグ ラフェン 合成法(APEX反応)を不斉反応へと展開することによって効率的なキラル湾曲ナノグラフェン類の合成法の確立を目指す。さらに本反応を様々な芳香環やヘテロ 芳香環に対して適用することで、一連のキラル湾曲ナノグラフェン類を創成し、その電子的 性質、 円二色性発光性の評価や有機発光素子への応用などを評価することを目的として、研究を開始した。 本年度の研究では、様々な多環芳香族炭化水素やヘテロ芳香環をテンプレートとして、APEX反応をおこない、キラルナノグラフェン合成へと適用可能な基質の適用範囲を探索した。その結果パラジウム触媒、オルトクオラニル存在下、ジヨードビアリールをπ拡張剤として[4]ヘリセンのAPEX反応を行なったところ、ラセミ体のヘキサベンゾ[6]ヘリセンの合成に成功した。また、この化合物はキラルカラム中で光学分割可能であることを計算的・実験的に確かめた。本合成反応は官能基化されていない多環芳香族炭化水素から直接的に一段階で[6]ヘリセンを与える初めての手法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘキサベンゾ[6]ヘリセンは、一般的なカップリング反応や縮環反応など他の手法では合成できない化合物であり、今回当該研究者が開発したAPEX反応によって市販の[4]ヘリセンから一段階で初めて合成することが可能となった。そのため、本手法は単に有機合成化学的観点からも優れた手法であると考えられる。本知見を得ることによって、当該研究の目的である「キラル湾曲ナノグラフェン合成」に大きく近づくことができ、次年度以降の研究の目処を立てることができたため、概ね順調に研究が進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
そこで本年度開発に成功したアキラルなAPEX反応系をキラル反応へと展開することで、光学活性なヘキサベンゾ[6]ヘリセンを合成することを目指す。現在、本反応ではパラジウム触媒、銀塩、オルトクロラニル、ジヨード ビアリールπ拡張剤を用いることでラセミ体の目的生成物が得られている。そこで、キラルなパラジウム触媒や銀塩、不斉配位 子をもちいることで、不斉反応へと展開できないか検討する。合成したキラル化合物の分析にはキラルカラム を用いたHPLC測 定によるeeの測定を行い、分離にはGPCを用いる。また吸収・蛍光スペクトルや円二色性スペクトル・旋光度測 定なども行うこ とで、キラル湾曲ナノグラフェンの基本的な性質についても明らかにする。
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