2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of comprehensive identification of spontaneous mutations based on whole genome sequencing applicable for the assessment of low-dose mutagens.
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17H00789
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
権藤 洋一 東海大学, 医学部, 特任教授 (40225678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福村 龍太郎 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (90392240) [Withdrawn]
牧野 茂 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (30462732)
木村 穣 東海大学, 医学部, 教授 (10146706)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自然発生突然変異 / ゲノム解析 / トランスクリプトーム解析 / ミュータジェネシス / 遺伝学 / 進化 / 次世代シーケンシング / バイオインフォーマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
完全遠縁交配法を用いて自然発生突然変異を蓄積したマウス8家系において、検出した突然変異の起源となる個体のトレースをアンプリコンseq法で実施したところ、すでに200を越える変異について起源となる個体を同定した。すべてメンデル遺伝していたうえ、新しい発見として、変異起源が同定された個体の1/4強において、変異アレルが有意に50%より少なく、大まかに25%前後から1%前後まで再現性よくモザイク変異として検出された。このことは、全体の1/4の変異は、受精後2細胞期以降32細胞期以前に生殖細胞系列変異に生じていることを示す。もし、受精後、すべての体細胞分裂あたりの突然全変異率が一定であれば、32細胞期以前に次世代に遺伝する変異が生じる確率は32/全成体体細胞数より少ないはずであり、実験的には検出できないはずである。すなわち、何らかの未知のメカニズムによって32細胞期までの自然発生突然変異率が、それ以降の突然変異率よりも少なくとも10億倍平均的に高いことを今年度は明らかにした。現在、一塩基変異(SNV)に加え、小さなindelについても2017年度は同様の解析を進めたところ、やはり、受精後発生の極初期に極めて高く次世代に遺伝するindel変異も生じていることが示唆された。以上は世界標準として使用されてきたC57BL/6Jの亜系統C57Bl/6JJclを用いた結果であるが、さまざまな遺伝的背景における自然発生突然変異の違いを検証するために進めている兄妹交配における解析においては、発がん性が極めて低いなど標準系統とは大きく異なった形質を示す日本産野生マウス由来のMSM/Ms系統の解析がまず進み、自然発生突然変異率が標準系統に比べ20%ほど低く、発がん率の低さの1要因ではあるもののすべては説明できないことが新たにわかった。変異スペクトルには大きな差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マウスでは、次世代に伝わる自然発生突然変異が、受精後から32細胞期以前までに、それ以降の変異率と比べ10億倍以上高い頻度で生じていることを今年度解明した。これは、ほ乳類の発生過程において、突然変異率が細胞分裂あたり(=DNA複製あたり)一定ではなく、発生のごく初期に極めて高頻度で生じていることを示す世界ではじめての発見である。発生の極初期に突然変異が生じれば有害な変異は着床期前後には淘汰されほぼ中立に近い変異を効率よく残すことが可能となる。ほ乳類、鳥類、は虫類などは他の生物種に比べ、雌雄ペアあたりの産子数が激減しているにも拘らず、この偏った変異生成機構により、遺伝的多様性を多産生物種と同等に保つ機構となりうるとともに、有性生殖が無性生殖に比べ有利となるひとつの機構ともなる。このように今年度の新発見は、単に自然発生の起源について新発見が得られたに留まらず、とくに、少産仔生物種において、社会的な遺伝的荷重を伴わず遺伝的多様性を高く保つ分子機構および有性生殖の進化学的利点を新しく示した。さらに今年度の成果は、生物個体に生じる突然変異と、培養細胞系に生じる突然変異は本質的に大きく異なることを強く示唆する。すなわち、生殖医療、幹細胞/iPS細胞などの再生医療を実施するにあたって、体細胞突然変異がいつどのように生じるか、さらに詳細に検証する必要性を示す。また、成体においても、例えば発がん機構解明や神経変成疾患解明など、突然変異およびその蓄積が基盤となって発症する疾患解明など、どの時期のどの組織においてどのくらいの突然変異が生じるか、臨床応用への影響も含め、改めて、研究を進める必要性を示しており、当初の計画を遥かにこえて波及効果の高い成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは当初の計画どおりに、完全遠縁交配法と兄妹交配法という二つの異なる自然発生突然変異蓄積法を比較解析することで、変異率の高精度な推定とスペクトル解析を、一塩基変異および小さなindelに着目して進める。これによって、遺伝的背景の違いによって変異率および変異スペクトルがどのように影響を受けるかを明らかにする。また、参照配列の見直しも含め、変異検出のための実験解析からインフォーマティクス解析までのパイプラインの高精度化および高速化をさらに進める。さらに、当初の計画を遥かに上回る波及効果の高い新発見が初年度の2017年度にえられたので、卵および精子とその生成メカニズムに着目して、発生の極初期に自然発生突然変異が極めて高頻度で生じる分子メカニズム解明に着手する。また、この新発見から、ヒトやマウスなどの(昆虫や魚類など他の生物種に比べ)少産仔生物種において、有害な変異は着床前後に自然選択して社会的な遺伝的荷重を最小限に抑えながら、中立に近い変異を世代ごとに新たに加えることで多様性を高く保つという、進化学的に新しい機構を提唱し解析を進めていく。このように、遺伝学、進化学、集団遺伝学から、生殖医療、個体発がんなどさまざまな分野への波及効果も高いので、海外および国内における学会発表および原著論文発表も進めて、情報発信も行なう。
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Research Products
(23 results)