2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of comprehensive identification of spontaneous mutations based on whole genome sequencing applicable for the assessment of low-dose mutagens.
Project/Area Number |
17H00789
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
権藤 洋一 東海大学, 医学部, 特任教授 (40225678)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 穣 東海大学, 医学部, 教授 (10146706)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 自然発生突然変異 / ゲノム解析 / トランスクリプトーム解析 / ミュータジェネシス / 遺伝学 / 進化 / 次世代シーケンシング / バイオインフォーマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
自然変異を蓄積した完全遠縁交配8家系において、マウスゲノムの総ユニーク配列1,302,148,477bp上に発見した455個の新規SNV変異から自然変異率5.5X10-9/bp/世代を得た。受精時、どの接合子60億塩基対にも平均33個の新たなSNVが生じている計算になる。ヒトと同様に精子由来の変異が卵由来より2倍あるとすれば、精子から22個、卵から11個もたらされる計算となる。さらに、Amplicon-seqでトレースできた214SNVのうち56個(26.2%=56/214)が、変異アリル頻度(MAF)30%未満であった。Amplicon-seqリード数の平均値39,736および中央値25817より、ヘテロ接合体のMAFの期待値50%からは有意に減る方向へのみ変異アリル頻度が偏っていることを確認した。受精後2細胞胚期に変異が固定すればMAF25%、4細胞胚期に固定すれば12.5%と半減していくことから、発生初期32細胞胚期までに生殖細胞系列変異の26.2%が固定したという昨年度の仮説を裏付けた。また、雌性および雄性生殖細胞の初期発生時の分化および分裂数の違いを加味し、卵では平均30回、精子では平均70回の細胞分裂後に受精し世代交代が進むとすると、雌雄何れの生殖細胞系列においても32細胞胚期までは2.8X10-10/bp/細胞分裂、32細胞胚期以降は9.2X10-11/bp/細胞分裂と、胚発生初期は以降よりも3倍変異率が高いことを(2017年度報告を是正するとともに)世界ではじめて明らかにした。 マウス近交系の兄妹交配を用いた変異蓄積も予定通り進み、各世代から解析のための採材を行なった。 初期発生において変異率が高くなるメカニズム解明のために、マウス未受精卵の網羅的トランスクリプトーム解析が、先進ゲノム支援課題として採択され進んだ。情報解析のためサーバ室を新たに構築整備した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、これまでまったく知られていなかったほ乳類ゲノムに生じる突然変異について「塩基対当たり細胞分裂当たり(=DNA複製当たり)」の変異率を世界で初めて得たのがもっとも大きな成果となりさらに前倒しで研究が進んだ。次世代シーケンシングの利用により、ヒトやマウスなどでも「塩基対当たり世代当たり」の自然突然変異率の推定は進んでいるものの、「細胞分裂当たり」の突然変異率推定は放射線や化学変異原など頻度が高い状態でも推定することが困難であった。また、培養細胞系ですらなかなか推定ができなかった。本研究から、雌雄生殖細胞分化の起こっていない32細胞胚期以前では、平均2.8X10-10/bp/細胞分裂、また、32細胞胚期以降の雌雄分化が生じ成体まで平均9.2X10-11/bp/細胞分裂という自然変異率がはじめて得られた。ヒトなどですでに報告されている卵由来と精子由来の変異数の違いは、卵が胎児期の減数分裂期で分裂が休止状態となるのに対し、精子では生涯細胞分裂が続いていくことの違いで説明できることも明らかとした。 また、胚発生のごく初期に変異率が高いことによって、産仔数が極めて少ないほ乳裏や鳥類でも遺伝的多様性を高く保ちうる効果的な選択淘汰と適者生存が可能となる、という2017年度に提唱した作業仮説の検証にあたり、まず2018年度は、マウス未受精卵に「異なるDNA複製修復組換えなど関連酵素群のセット」が受精前に用意されていて細胞分裂ごとに半減し、順次、成体におけるセットに置き換わる、という仮説検証を開始した。そのために未受精卵約2000個を採取し、網羅的トランスクリプトーム解析が順調に進んだ。さまざまな遺伝的背景によって自然変異の起因や生成が異なるかどうか検証するためのマウス近交系を用いた兄妹交配も順調に進み採材を予定どおり実施しサンプルを凍結保存した。情報解析用のサーバ室整備も進んだ。
|
Strategy for Future Research Activity |
予定より進んでいるので前倒しして変異解析を進めて行く。まず、2019年度からいよいよ遺伝的背景の異なる条件下での自然発生変異の違いの有無の実験検証に入る。そのために、兄妹交配から得たサンプルのゲノムDNAを抽出し全ゲノムシーケンシングを行なう。 また、32細胞胚期までの高頻度自然突然変異率の起因を明らかにするため、2018年度には先進ゲノム支援課題としても採択され、マウス未受精卵トランスクリプトーム解析が進んだので、2019年度は情報解析を進める。とくに、DNA複製修復組換えなど遺伝子群に着目して未受精卵固有の発現遺伝子や量の違いなどの情報解析を行なう。小さなindel変異検出は進んでいるので、2019年度は、500bp以上のいわゆる構造変異structural variationの検出のための情報解析にも着手する。 2018年度には新たにサーバ室を構築整備し、一連の情報解析に必要なリナックスサーバおよび基本となる情報解析パイプラインも拡充したので、チューニングを行いバイオインフォーマティクス解析にも本格的に取りかかる。 さらに、自然に生じる変異を高速高精度に検出できることを実証したので、微量変異原におけるLNTモデル検証などを、実際に進めるための共同研究など2019年度から本格的に検討する。 2017年度の成果を踏まえて、2018年度は国内学会や会議での招待講演依頼も多く引き受けた。2018年度に世界ではじめてえられた「ほ乳類の個体内に自然に生じる変異の塩基対当たり細胞分裂あたりの変異率」など、すでにいくつかさらに大きな成果が得られたので、2019年度からは国際会議での発表および原著論文発表も行い、情報公開をさらに推し進めていく。
|
Remarks |
アウトリーチ活動: 「ゲノムの基本から個別化医療やデザイナーベイビーまで」神戸高校12回生東京会12月例会招待講演、2018年12月8日、神戸大学東京六甲クラブ、東京都千代田区 特別講義「ゲノム解析から個別化医療・デザイナーベイビーまで」2018年12月25日、東海大学医学部,伊勢原市
|
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Mice with endogenous TDP-43 mutations exhibit gain of splicing function and characteristics of amyotrophic lateral sclerosis.2018
Author(s)
Fratta P, Sivakumar P, Humphrey J, Lo K, Ricketts T, Oliveira H, Brito-Armas JM, Kalmar B, Ule A, Yu Y, Birsa N, Bodo C, Collins T, Conicella AE, Mejia Maza A, Marrero-Gagliardi A, Stewart M, Mianne J, Corrochano S, Emmett W, Codner G, Groves M, Fukumura R, Gondo Y, Lythgoe M,(15名略), Fisher EM, Acevedo-Arozena A
-
Journal Title
EMBO Journal
Volume: 37
Pages: e98684
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-