2017 Fiscal Year Annual Research Report
アフガニスタンの活断層分布図の作成と首都カブールの地震危険度評価
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17H02032
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
堤 浩之 同志社大学, 理工学部, 教授 (60284428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アフガニスタン / 活断層 / 変位速度 / 宇宙線生成核種年代測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,米軍偵察衛星によって撮像されたCORONA画像の判読により,アフガニスタン東部を南北に縦断するチャマン断層の詳細活断層分布図を作成した.チャマン断層に沿っては,河谷や扇状地の明瞭な左ずれ変位が全域にわたって認められる.この作成作業を通して,宇宙線生成核種年代測定による横ずれ変位速度算出のための調査候補地を数ヶ所選定した.2017年8月から9月に,それらの調査候補地の現地調査を行った.その結果,カブール盆地の南方に位置する地点を調査地として選定した.ここでは,扇状地起源の段丘面を隔てる段丘崖が約165m左横ずれしており,断層の東側の3つの段丘面からそれぞれ1試料,断層の西側の3つの段丘面からそれぞれ1試料の,計6つの段丘礫層の岩石試料を採取した.採取した試料は,京都大学防災研究所と東京大学タンデム加速器研究施設において粉砕や化学処理を施し石英を抽出した.精製した試料について加速器質量分析を行い,10Beの存在量から各段丘面の形成年代を算出した.その結果,1試料を除いて,段丘面の地形学的な新旧関係と調和的な年代が得られた.約165m左ずれ変位している段丘崖の下位の段丘面の年代(=段丘崖の年代)は約46000年前と求められたため,チャマン断層の左横ずれ変位速度が約3.6mm/yrと求められた.この速度はこれまでにパキスタン領内で得られた変位速度(約20mm/yr)よりも有意に小さい.この原因として,チャマン断層の変位速度が北へ向かって小さくなる,あるいは並走する断層に変位が分配されているなどの可能性が考えられる.なお試料の化学処理に関わる機器と薬品の不具合が発生したため,年代測定を2018年3月までに完了することができなかった.そのため研究費の一部を2018年度に繰り越し,試料の精製と加速器を使った年代測定は2018年度に行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料の化学処理に関わる機器と薬品の不具合のために,2017年度に採取した岩石試料の年代測定が2018年度にずれ込んだが,2018年度の現地調査前に年代値が得られたため,その後の調査には影響がなかった.研究の初年度に計画した調査研究はほぼ予定通り完了することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
アフガニスタン全土の治安の悪化により,研究代表者が渡航して現地調査を行うことができなくなった.しかし本研究課題の協力者であり,同志社大学大学院理工学研究科博士後期課程に在学中のアフガニスタンからの国費留学生が現地調査を実施し,地形調査や岩石試料の採取は予定通りに進んでいる.次年度以降も現地調査前に入念に議論し,現地からも定期的に報告を受けることで調査を進める予定である.
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Research Products
(1 results)