2018 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary analysis of the pre-Ainu skeletons excavated in Hokkaido
Project/Area Number |
17H03737
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
安達 登 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60282125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40244347)
角田 恒雄 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (80446575)
神澤 秀明 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (80734912)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プレ・アイヌ / 縄文 / 続縄文 / オホーツク文化 / 擦文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アイヌ民族成立の基盤である北海道縄文時代人のうち、礼文島船泊遺跡出土人骨のゲノム解析を進めた。年度内の論文受理は果たせなかったが、去る5月上旬に論文はAnthropological Science誌にアクセプトされた。また、プレアイヌのゲノム解析として、豊浦町礼文華貝塚、伊達市有珠6遺跡、泊村茶津2号洞穴出土の続縄文人骨、およびオホーツク文化鈴谷期の利尻町種屯内遺跡出土人骨の解析をほぼ終了した。さらに、北海道縄文との比較データを増やすため、考古学的に縄文時代後期の画期を示す称名寺式土器を算出した標識遺跡である、神奈川県称名寺貝塚出土の人骨についてミトコンドリアDNA解析をおこない、Anthropological Science誌に論文が掲載された。この遺跡から出土した縄文時代人にみられたハプログループは4種類で、N9b*、M7a2は北海道縄文と共通していたが、M7a1およびD4b2はこれまでのところ北海道縄文には観察されないものであった。また、この遺跡からは縄文時代人以外に古墳時代最初期および平安時代の人骨が、縄文時代人が埋葬されていた地層の直上から発掘された。観察されたハプログループはそれぞれB4fおよびB5b3aであったが、これらのハプログループはこれまで縄文時代人からは検出されていない。ミトコンドリアDNAに関する先行研究で、縄文時代人と現代本州日本人には大きな遺伝的差異があることが明らかとなっている。今回の結果から、少なくとも称名寺貝塚においてはヒトの遺伝的転換は古墳時代あるいはそれ以前に遡る可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アイヌ民族成立の基盤である礼文島船泊遺跡出土人骨のゲノムを、現代人とも比肩しうる高深度で決定することができた。この結果、プレアイヌのゲノムを理解する基盤が確立された。また、プレアイヌのゲノム解析のうち、続縄文時代人である豊浦町礼文華貝塚、伊達市有珠6遺跡、泊村茶津2号洞穴出土人骨、およびオホーツク文化鈴谷期の利尻町種屯内遺跡出土人骨のゲノム解析をほぼ終了した。よって、本研究課題の進捗状況は概ね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
プレアイヌのうちでも、これまでいかなる遺伝子解析の報告もない擦文時代の人骨、および最もアイヌ期に近いトビニタイ文化の人骨である、羅臼町オタフク岩およびオタフク岩洞窟遺跡から出土した人骨の解析をおこなう。これらの人骨のデータを得ることで、北海道における縄文からアイヌ期直前に至る全ての時代を網羅することができ、北海道のヒトの遺伝的変遷を明らかにできることが期待される。
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Research Products
(8 results)