2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J00193
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
跡部 発 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 宮脇リフト / シーソー等式 / Gan-Gross-Prasad予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、「宮脇リフトの表現論的再定式化」について取り組んだ。宮脇リフトとは、宮脇氏によって1992年に存在を予想されたモジュラー形式を構成するため、池田氏が2006年に取り組んだ新しいモジュラー形式のリフトである。この構成は、池田リフトの制限によるもので、テータリフトの類似であると言える。しかしながら、この時点では、宮脇リフトが恒等的に0である可能性を排除できておらず、そのために宮脇氏の予想の解決には至らなかった。今日では、宮脇氏の予想は、2013年に証明されたArthurの重複度公式の特別な場合であり、抽象的には宮脇氏の予想にあるモジュラー形式の存在が分かっている。一方で宮脇リフトは構成が分かっているため、多くの応用が期待できる。そのため、宮脇リフトは重要な研究課題であると言える。 今年度は、この宮脇リフトを表現論的に再構成した。特に、局所宮脇リフトの概念を定義し、その非消滅性、緩増加表現に対するHowe双対原理、局所シーソー等式を示した。さらに、それは局所Gan-Gross-Prasad予想の新しい場合に応用できることが分かった。また、局所宮脇リフトを利用することで、大域宮脇リフトをより一般的に定義することが可能になった。 一般的に大域宮脇リフトを定義することにより、大域シーソー等式を示すことができた。応用として、大域宮脇リフトの非消滅性を大域Gan-Gross-Prasad予想に帰着することができた。大域Gan―Gross-Prasad予想とは、保型形式の周期の非消滅性と保型L-関数の特殊値の非消滅性との同値性を主張する予想である。これは現代の保型表現論の主要な問題であり、最も活発に研究されている課題の一つと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、宮脇リフトを表現論的な立場から考察することにより、多くの結果を得た。特に、大域宮脇リフトの局所成分に現れるような表現については、詳しい記述が得られた。また、大域宮脇リフトの非消滅性を大域Gan-Gross-Praasd予想に帰着することができた。 これらの研究は、今後の保型表現論の研究の有用な道具になると考えられる。また、この研究を通して、新たに取り組むべき課題の発見にもつながった。 これらを踏まえて、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究により、宮脇リフトの非消滅性の問題は、大域Gan-Gross-Prasad予想につながった。この予想は非常に難しいものであるが、その予想の一部の主張については現在知られているの道具で証明することができる可能性がある。平成30年度は、韓国人の研究者と研究討論をしながら、この大域Gan-Gross-Prasad予想の一部の主張に取り組むつもりである。 また、平成29年度には、シンプレクティック群・メタプレクティック群に関する宮脇リフトについて調べたが、ユニタリー群に関する宮脇リフトも考えることができる。こちらについても今後の課題として取り組むつもりである。ユニタリー群の場合には、大域Gan-Gross-Prasad予想が部分的に解決されている等の理由から、より多くの結果が得られることが期待できる。
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Research Products
(11 results)