2017 Fiscal Year Annual Research Report
Rigidity of actions of Lie groups
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17J00910
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸橋 広和 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 葉層構造 / de Rhamコホモロジー / Hodge分解 / ユニタリ表現論 / 剛性 / Lie群の局所自由作用 / 小平-Spencer理論 / DGLA |
Outline of Annual Research Achievements |
葉層構造に対して葉層構造のde Rhamコホモロジーが定義される。これは通常の多様体に対するde Rhamコホモロジーに比べると計算が難しい。実際双曲的な曲面の測地流の弱安定葉層という基本的な葉層構造に対してもその2次のコホモロジーは計算されていなかった。今回はこの葉層構造(Fとする)に対して全ての次数でコホモロジーを一度に計算する方法を見つけた。特殊な場合を除くと葉層構造のde Rhamコホモロジーを定義する複体に対しては通常のHodge分解は成り立たないと考えられている。これは複体が葉層構造の葉の方向にしか楕円型でないためである。今回扱った葉層構造Fについても通常のHodge分解は成り立たないと思われるが、それとは別のHodge分解のようなものを構成した。構成はPSL(2,R)のユニタリ表現論に基づく。新しいHodge分解は2段階あり、両方を合わせることによってFのコホモロジーが(いくつかの係数で)計算される。この2段階のHodge分解がなぜ存在するのかという理由はまだわかっていない。 Fの2次コホモロジーが計算されたことによってHaefligerが1980年と1981年の論文で考えていた問題が解ける。つまりFはtotally minimizableという微分幾何学的な性質を持つことがわかる。 そもそも今回葉層構造のde Rhamコホモロジーを計算しようと思った動機はLie群の滑らかな局所自由作用に対する小平-Spencer理論を作り、それが適用できる非自明な例を見つけるためであった。その目的は完全には達成されていないが部分的な結果は得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
通常のものとは異なるHodge分解という全く予期していなかったものが見つかったため。これにより当初の計画にはなかった新しく考えるべきことがいくつかでてきた。今回の結果はPSL(2,R)の場合を扱っているが、同様のHodge分解が一般の半単純Lie群とその放物型部分群に対して成り立つかという問題がある。 葉層構造の剛性を示す1つの方法としてNash-Moserの陰関数定理を使ったHamiltonの方法がある。これは一見便利な方法であるが、これを適用することで剛性が示される葉層構造の例は限られていた。それはNash-Moserの陰関数定理の仮定であるtame estimateと呼ばれる作用素の評価を得ることが難しいからである。今回のHodge分解の構成の良いところはtame estimateを満たす作用素を構成できることにある。したがって同様のHodge分解をより一般の半単純Lie群に対して構成できれば今まで剛性が示されていなかった葉層構造の剛性を示すことができる。これは当初動機として含まれていなかったことであり、Hodge分解について考えるべき新しい動機付けを与えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見つかったHodge分解はPSL(2,R)という群での具体的な計算に基づいて構成されている。そしてなぜそのような分解が存在するのかという説明はまだされていない。PSL(2,R)の次に簡単な群であるSL(2,C)について考えたとき、第1段階のHodge分解はPSL(2,R)のときと同様の具体的な計算によって構成できる。しかし計算の量がかなり増えることからコンピュータなしの計算ではこれ以上先に進むことは難しい。したがってまずは第1段階のHodge分解を一般の半単純Lie群と放物型部分群に対して理論的に説明することが望ましい。また第2段階のHodge分解についてはSL(2,C)の場合に関してもまだどう定式化すればよいのかわかっていないのでその点について考える必要がある。 PSL(2,R)の場合にはすでにHodge分解が構成されているのでNash-Moserの陰関数定理を用いた葉層構造の剛性への応用について考えられる。しかしPSL(2,R)の場合の特殊事情によってまだ1つ示さなければならないことが残っている。それは小平-Spencer写像が各点で同型となっているような葉層構造の族の構成である。考えるべき葉層構造の族はよく知られたものであるので問題は小平-Spencer写像が同型であることを示すことにある。 またSL(2,C)の場合に両方のHodge分解をうまく構成できればPSL(2,R)の場合と異なり直ちに葉層構造の剛性についての応用が可能である。MANをSL(2,C)の放物型部分群、ΓをSL(2,C)の一様格子とする。MANはSL(2,C)/Γに左からの掛け算で作用する。その作用の軌道葉層が剛性をもつかどうかは未解決であるが、Hodge分解が期待通りに構成できればこの葉層構造が剛性をもつことをNash-Moserの陰関数定理を用いることによって証明できる。
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